採用コストはどれくらい上がった?費用と時間で見る新卒採用のコスト
採用難と言われる時代、その影響はさまざまな数字となってあらわれています。
この記事では、新卒採用にかかるお金と時間に焦点をあて、大学生と高校生の採用の比較などをすることで、企業の若手採用について考えていきたいと思います。
目次
(1)増加する大学の新卒採用コスト
(2)お金と時間の比較でわかる新卒と高校生採用の違い
(3)安易に高校生採用を始めると失敗する
(4)まとめ
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(1)増加する大学の新卒採用コスト
リクルートキャリアが発表した「就職白書2019」によれば、2018年と比較して、大学生・大学院生の新卒採用にかかる時間と費用が増加したと回答した企業は約4~5割となりました。
採用が難しくなり、各社総力戦の様相を呈しています。
出典:「就職白書2019」リクルートキャリア 就職みらい研究所
採用活動に費やした時間に関して詳細を見ると「充足」よりも「未充足」企業のほうが「増えた」と回答する割合が高くなっています。
採用がうまくいく企業と思うように成果がでない企業は、こういった数字からも見てとれます。
出典:「就職白書2019」リクルートキャリア 就職みらい研究所
一方、企業が採用活動の際に利用する媒体など、大学の新卒採用活動支援サービスの市場規模はどうなっているでしょうか。
2019年5月発表、矢野経済研究所の「新卒採用支援市場規模に関する調査」によれば、2017年度の新卒採用支援市場規模は前年度比7.3%増の1,185億円となっており、以降も増加が見込まれていました。
出典:株式会社矢野経済研究所『新卒採用支援市場に関する調査(2019年)』
これらから新卒採用コストは上がっていると言えるでしょう。
コストは、使ったお金(費用)とかけた時間の総量で測ることができます。
(2)お金と時間の比較でわかる新卒と高校生採用の違い
ここ5年間の大学・大学院・専門・高専等の新卒採用にかかる費用の推移を見てみます。
出典:『2019年卒マイナビ企業新卒内定状況調査』マイナビ 2015年〜2019年卒のデータからグラフを作成
上場企業と非上場企業で総額平均に大きな差があるのは、採用総数が異なるためであると考えられます。
上場企業の採用費総額は大幅に増加しています。対して、非上場企業は2017年に減少し、以降はそれほど変化なく推移しています。
この採用費総額の変化に対して、一人当たり採用費の変化はどうでしょう。
出典:『2019年卒マイナビ企業新卒内定状況調査』マイナビ 2015年〜2019年卒のデータからグラフを作成
上場・非上場とも5年間の傾向を見れば、どちらもゆるやかに上昇しています。
以上から、上場企業は「採用費を増やし、多少効率は落ちているものの、多くの新卒を採用できている」、非上場企業は「採用費はほぼ変わらず、効率が落ちているので、採用人数はやや減っている」(いずれも充足したかどうかにかかわらず)と考えられます。新卒採用では大企業が有利と考えられます。
売り手市場である学生全体の傾向は「大手志向」。
「大手」は「知名度のある企業」とも言えますので、企業規模が大きく知名度のある企業(頻繁にCM放送、消費者向けの事業をやっている企業など)が採用にとって有利となります。
加えて、昨今は学生の媒体離れも聞かれるようになっており、従来の媒体だけでなくリファラル採用やダイレクトリクルーティングなど多様なチャネルに対応することが採用の成否を分けることになりそうです。
では、大学の新卒採用と比較して高校の新卒採用はどうでしょうか。
令和元年度の高校生の求人倍率は2.52倍(※1)という発表がありました。
これは5年前(平成27年)の2.04倍と比べて上昇しており(※2)、大学生の1.82倍も大きく上回っています。高校生採用に乗り出す企業が増え、競争は極めて厳しい状況となっています。
※1 『令和元年度「高校・中学新卒者のハローワーク求人に係る求人・求職状況」取りまとめ』厚生労働省
※2『大卒求人倍率調査』リクルートワークス研究所
しかしながら、高校の新卒採用に関する費用はほとんど増えていない、もしくは微増程度と予想されます。
なぜなら、高校の新卒採用はルールが厳格であるがゆえ、採用活動でできることも限られているからです。
大学の新卒採用では当たり前の「媒体掲載」、しかし高校の新卒採用では媒体の種類がそう多くありません。
また高校の新卒採用では「インターン」「大量エントリー獲得」「会社説明会」「内定辞退防止」はほぼ必要ありませんので、その分費用がかかりません。
お金の面で考えれば、大学の新卒採用に比べて高校の新卒採用は取り組みやすいと考えられます。
ただし、高校の新卒採用は学校との関係構築が重要となりますので、高校の新卒採用で結果を出そうとすると「学校訪問」が増えます。また「会社説明会」のかわりに「職場見学」の受入れを行います。
学校訪問に必要なのはお金ではなく時間です。
この「学校訪問」も含め、今度は大学の新卒採用と高校の新卒採用を「時間」で比較してみます。
上のグラフは、一般的な採用活動のケースをプロセスごとに時間算出したものです。
それぞれを見たときに、構成比として目立つのは大学の新卒採用の「エントリー獲得(母集団形成含む)」と「全体選考間連絡」、そして高校の新卒採用の「学校訪問」です。
大学の新卒採用は、高校の新卒採用に比較して応募に対する内定率が低いです。また内定辞退もあります。そのため「採用希望人数」に対してたくさんの応募を集めなければなりません。
採用目標達成の第一歩は母集団形成となり、求人告知のための媒体費や実行にかかるマンパワーがかかります。
あわせて、多数の学生と選考プロセスそれぞれで連絡が発生することになりますので「全体選考間連絡」が増えます。
高校の新卒採用は「一人一社制」により、応募した学生はほぼ100%自社志望です。
合わせて読みたい:高卒採用の「一人一社制」ってどんなルールなの?
また、応募するかどうかを決める「会社見学」も1学生あたり平均して1〜3社程度ですので、この時点でも自社志望度が高いです。会社見学に至るまでのプロセスを、大学の新卒採用でいうところの母集団形成とするなら、高校の新卒採用では「学校訪問」にあたります。繰り返しになりますが、高校生採用の一番のがんばりどころは「学校訪問」になります。
学校訪問1校あたりの時間を算出してみましょう。
準備(資料の用意、訪問学校の下調べ、当日話す内容の整理)に1.5時間、行き帰りに1時間、訪問時間に1時間、合計で3.5時間程度かかります。行き帰りの時間は、近い学校をまとめて訪問すれば効率化することができます。また、準備時間は経験により短縮できる部分です、一度関係構築ができれば次年度以降は圧倒的にやりやすくなります。
このように、時間の面でも、高校の新卒採用は大学の新卒採用と比べて費やす量が少なくて済むと言えそうです。
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(3)安易に高校生採用を始めると失敗する
企業の人材不足により、大学の新卒採用、高校の新卒採用によらず、若手採用はコスト高の傾向となっています。
上場企業をはじめとする大企業がこれまでよりも採用活動費を増やしており、その他の企業はそれほど顕著ではありません。
しかし、かける時間は企業規模に関係なく増えており、時間を増やしたところで採用がうまくいくとは限らないという状況です。
大学の新卒採用に比較して高校の新卒採用はお金・費用の両面で少なくて済みます。
実際、求人倍率が上昇しており、高校生採用を新たに始める企業が増え、求人数が増えています。
しかし、安易に「新卒は大卒採用が難しい、だから高校生採用をはじめよう」というのはおすすめしません。
求人倍率の上昇で、これまでの活動量・内容では採用がしずらくなってきているのも事実としてあります。
本質的には、自社の求める人材像を明らかにし、それに対して高校の新卒採用が適しているのかどうかを考えるべきです。
現在、高校生の就職活動のあり方が政府やメディアでも議論されており、将来的に高い内定承諾率は下がるかもしれません。
また、高校の新卒採用を行うのであれば(行わなくても)、新入社員の受け入れや育成についての準備をしっかりと行う必要があります。
高校生の入社後3年以内離職率は39.2%と、新卒と比べて7.2ポイント高く、事前の相互理解と入社後の環境整備が不可欠だからです。
このような点を踏まえてもなお、高校生採用を始めたいと考えるなら、早めのスタートをおすすめします。
高校生採用においては学校との関係性が資産となります。そのため、早くから学校訪問を通じて学校との関係構築ができれば、その分採用活動がしやすい状況となるからです。
(4)まとめ
企業の人材不足により、大学の新卒採用、高校の新卒採用によらず、若手採用はコスト高の傾向となっています。費用面・時間面で比較をすると、高校の新卒採用は大学の新卒採用と比べてコストは少なくて済むと言えます。
また、高卒採用市況も求人倍率は上昇傾向です。高校との関係性も重要になるため、始めるのであれば早く開始することをお勧めします。
しかし、大卒採用が厳しいと言って安易に高卒採用を選択するのではなく、自社の求める人物像や、自社の強みを検討し採用ターゲットを決めること、採用後の新入社員受入や育成についてしっかりと検討しましょう。
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