離職率低下!中小企業における新卒社員向け社内研修の重要性と内容
「うちの会社は中小企業だから、新卒社員への研修なんて大企業みたいに立派なものはできない…」 そう思っていませんか? 実は、中小企業だからこそ、新卒社員への社内研修が重要です。充実した研修は、新卒社員の早期離職を防ぎ、企業へのエンゲージメントを高め、結果として人材育成のコスト削減にもつながります。 本記事では、中小企業における新卒社員向け社内研修の重要性と、具体的な内容、そして研修を成功させるためのポイントを紹介します。
1. 新卒社員の離職率が高い現状
厚生労働省の調査によると、2021年3月卒業者の大卒就職者の3年以内の離職率は32.5%と高く、依然として多くの企業で早期離職が課題となっています。
特に中小企業では、大企業に比べて離職率が高い傾向があり、人材の定着と育成が企業の成長を左右する重要な要素となっています。
業界・企業規模別の離職率
離職率は業界や企業規模によって異なり、以下の表は、厚生労働省の調査に基づいた令和2年3月卒業者以降の大卒就職者の3年以内の離職率を示しています。
産業 | 離職率 |
宿泊業,飲食サービス業 | 51.4% |
生活関連サービス業,娯楽業 | 48.0% |
教育,学習支援業 | 46.0% |
医療,福祉 | 38.8% |
建設業 | 38.5% |
製造業 | 19.0% |
情報通信業 | 27.9% |
企業規模 | 離職率 |
30人未満 | 29.9% |
30~99人 | 23.6% |
100~299人 | 16.5% |
300~499人 | 12.3% |
500~999人 | 10.6% |
1000人以上 | 8.3% |
新卒社員が離職する主な理由
新卒社員が早期に離職してしまう理由には、次のようなもの が挙げられます。
ミスマッチ
仕事内容が想像と違っていた
企業文化や社風と合わなかった
人間関係がうまくいかなかった
職場環境への不満
労働時間の長さや残業が多い
給与や待遇に対する不満
教育体制やキャリアアップの機会が不足している
自己都合
キャリアチェンジを希望
結婚や出産、家族の介護などのライフイベント
健康上の理由
企業は新卒社員の定着率を高めるために、ミスマッチを防ぐための採用活動や、入社後のギャップを埋めるための研修制度の充実、働きやすい職場環境づくりなどが求められています。
2. 中小企業における社内研修の重要性
中小企業にとって、優秀な人材の確保と育成は、企業の成長と存続を左右する重要な課題です。
なぜ社内研修が重要なのか?
新卒社員にとって、学生から社会人への転換期における不安や疑問を解消し、スムーズに企業生活を送るためには、適切な研修が必要です。
社内研修は、単なる知識やスキルを習得する場ではなく、企業理念や文化を理解し、企業の一員としての自覚を育むための重要な機会となります。
早期離職を防ぐ
厚生労働省の調査によると、大企業と比較して中小企業の新卒社員の3年以内の離職率は高くなっており、企業にとって大きな損失です。新規学卒就職者の離職状況(令和2年3月卒業者)早期離職の原因としては、仕事内容へのミスマッチや職場環境への不適応などが挙げられます。適切な研修によって防ぐことが可能です。新卒社員に対して、入社前に仕事内容や企業文化を正しく理解させ、入社後も定期的な面談や研修を通じて、不安や疑問を解消することで、定着率の向上に繋がります。
企業へのエンゲージメントを高める
企業へのエンゲージメントとは、従業員が企業に対してどの程度愛着や忠誠心、貢献意欲を持っているかを表す言葉です。
企業へのエンゲージメントが高い従業員は、自社の仕事に誇りを持ち、高いパフォーマンスを発揮する傾向があります。新卒社員の場合、学生時代とは異なる環境や人間関係の中で、企業や仕事への価値観を形成していくことになります。企業理念やビジョンを共有し、企業文化への理解を深めるための研修は、新卒社員のエンゲージメントを高める上で非常に重要です。
また、新卒社員が自身の成長を実感できるような研修プログラムや、上司や先輩社員とのコミュニケーションを促進する機会を設けることで、企業への愛着や帰属意識を高めることができます。
人材育成のコスト削減
新卒社員の早期離職は、企業にとって採用活動や育成にかかったコストが無駄になるだけでなく、組織全体の士気低下や業務効率の低下にも繋がります。効果的な社内研修を実施することで、新卒社員の早期離職を防ぎ、人材育成にかかるコストを削減することができます。
目的
新卒社員の早期離職防止
企業へのエンゲージメント向上
人材育成コストの削減
効果
業務への適応力向上
企業文化への理解促進
組織への貢献意欲向上
人材育成の効率化
効果的な社内研修の内容
中小企業において、新卒社員が早期に活躍し、会社に定着してもらうためには、効果的な社内研修の内容を計画し、実施することが重要です。
ビジネスマナー研修
新卒社員にとって、社会人としての基礎を築くことは最初のステップです。ビジネスマナー研修では、社会人としての立ち振る舞い、電話対応、メールの書き方、名刺交換、服装など、基本的なビジネスマナーを学びます。これらのマナーを身につけることで、社内外の関係者と円滑なコミュニケーションを図り、信頼関係を築くことができます。研修では、座学だけでなく、ロールプレイングを取り入れることで、より実践的なスキルを習得できるようにします。
具体的な研修内容例
・挨拶の仕方、お辞儀の角度
・身だしなみ、服装、髪型
・電話対応(電話のかけ方、受け方、取次ぎ)
・メールの書き方(件名、宛先、本文、署名)
・名刺交換(名刺の受け渡し方、保管方法)
・来客対応、訪問時のマナー
・言葉遣い、敬語
・報連相
・時間管理、スケジュール管理
・ホウレンソウの重要性
ビジネスマナーを研修でしっかりと学ぶことで、新卒社員は自信を持って社会人としてのスタートを切ることができるでしょう。企業によっては、社内独自のルールや文化がある場合もあるため、合わせて指導することが重要です。また、近年では、オンラインでのコミュニケーションが増加しているため、Web会議システムのマナーやオンライン上でのビジネスマナーについても触れておくことも求められます。
企業理念・ビジョン共有
企業理念やビジョンは、会社の根幹となる価値観や将来像を示すものです。
新卒社員が企業理念やビジョンを理解し、共感することで、企業へのエンゲージメント(愛着や思い入れ)が高まり、自発的に業務に取り組む姿勢を育むことができます。研修では、企業理念やビジョンの背景、目指す未来、社員一人ひとりの役割などを具体的に説明し、理解を深めます。
また、グループワークやディスカッションを通じて、新卒社員同士が意見交換する機会を設けることで、企業理念やビジョンに対する理解を深め、共通認識を醸成することができます。
企業理念・ビジョン共有研修の進め方
1.企業の歴史や創業の精神を伝える
2.経営理念、ビジョン、行動指針を具体的に説明する
3.社員の行動事例を交えながら、理念やビジョンを体現することの重要性を理解する
4.グループワークやディスカッションを通じて、自身の仕事と企業理念・ビジョンとの繋がりについて考える
部署紹介・OJT研修
部署紹介では、各部署の役割や業務内容、組織体制などを説明することで、新卒社員は会社全体の事業構造や、自分が配属された部署の役割を理解することができます。OJT研修(On-the-Job Training)は、配属された部署内で、先輩社員が指導役となり、実際の業務を通して、必要な知識やスキルを習得していく研修方法です。実務を通して学ぶことで、より実践的なスキルを身につけることができます。また、先輩社員とのコミュニケーションを通して、企業文化や価値観を肌で感じることができます。
効果的なOJT研修を実施するためのポイント
・指導する先輩社員の役割を明確にする。
・具体的な目標設定と評価基準を設ける。
・定期的なフィードバックや面談を実施する。
・新卒社員が安心して質問できる環境を作る。
新卒社員がスムーズに職場に溶け込み、早期に戦力として活躍するためには、OJT研修は非常に重要な役割を担っています。効果的なOJT研修を実施することで、新卒社員の成長を促進し、企業全体の活性化に繋げることができます。
キャリアプラン研修
キャリアプラン研修では、新卒社員が自身のキャリアについて考える機会を提供します。将来のキャリアビジョンを明確にし、キャリア目標を達成するために必要なスキルや経験を認識することで、目標達成意欲を高めることができます。研修では、自己分析やキャリア設計、キャリアパスモデルの紹介などを行い、新卒社員が自身のキャリアプランを具体的に描けるようにサポートします。また、先輩社員のキャリア事例紹介やキャリア相談なども効果的です。
キャリアプラン研修の内容例
・自己分析:自分の強みや弱み、興味関心、価値観などを分析する
・キャリアビジョン設計:将来、どのような仕事で、どのような役割を果たしていたいか、具体的 な将来像を描く
・キャリアパスモデルの紹介:社内でのキャリアアップの事例や、様々なキャリアパターンの紹介
・目標設定と行動計画:キャリア目標を達成するために、具体的な行動計画を立て、行動目標を設定する
・スキルアップ:キャリア目標を達成するために必要なスキルや知識を習得するための方法や、研修制度の紹介
・キャリア相談:キャリアに関する疑問や不安を解消するために、上司や先輩社員、人事担当者などに相談できる機会を設ける
新卒社員にとって、キャリアプラン研修は、自身のキャリアについて深く考える貴重な機会となります。研修を通じて、将来のキャリアビジョンを明確にし、具体的な行動計画を立てることで、モチベーション高く仕事に取り組むことができるようになります。
メンター制度
メンター制度とは、新卒社員一人ひとりに、上司とは別の先輩社員をメンターとしてつけ、仕事や職場環境の相談に乗ったり、キャリアの指導や精神的なサポートを行う制度です。メンターは、新卒社員の良き相談相手となり、困った時に気軽に相談できる関係性を築くことで、新卒社員の不安や悩みを軽減し、スムーズな職場適応を支援します。また、メンターは、自身の経験や知識を活かして、新卒社員の成長をサポートします。定期的な面談やアドバイスを通して、新卒社員のスキルアップやキャリアアップ支援をします。
メンター制度を成功させるためのポイント
・メンターとメンティーのマッチングを適切に行う:新卒社員の個性やキャリア目標などを考慮し、相性の良いメンターを選定することが重要
・メンターへの研修:メンターとしての役割や心構え、コミュニケーションスキルなどを学ぶ研修を実施する
・活動内容を明確にする:メンター制度の目的や活動内容、頻度などを明確にしておくことで、メンターとメンティー双方に共通認識を持たせる
・定期的な面談の実施:定期的に面談を実施し、業務の進捗状況や課題、キャリアに関する相談などを行う
・フィードバックの機会を設ける:メンター制度の運用状況を定期的に振り返り、改善点を検討する
メンター制度は、新卒社員の定着率向上や早期戦力化、企業文化の継承などに効果が期待できます。企業は、メンター制度を導入する際には、これらのポイントを踏まえ、効果的な運用を心掛けることが重要です。
・これらの研修を通して、新卒社員は社会人としての基礎を築き、企業への理解を深め、自身のキャリアプランを描くことができます。企業は、新卒社員の成長を支援するために、効果的な社内研修プログラムを設計・実施することが重要です。
参考資料:経済産業省 働き方改革
4. 新卒社員研修を成功させるポイント
新卒社員研修を成功させるには、事前の綿密な計画と、研修後のフォローアップが重要になります。ここでは、研修を成功に導くためのポイントを紹介します。
研修計画の立案
効果的な研修を行うためには、まず、どのような研修を実施するのか、具体的な計画を立てる必要があります。計画を立てる際に考慮すべきポイントは以下の点が挙げられます。
研修の目的・目標設定
研修を通して、新入社員にどのようなスキルや知識を身につけてほしいのか、どのような状態になってほしいのかを明確にしましょう。目的や目標が曖昧なままでは、効果的な研修内容を設計することはできません。具体的な目標設定を行うことで、研修の成果を評価しやすくなるというメリットもあります。
「ビジネスマナーを習得させる」「会社の理念やビジョンへの理解を深める」「配属部署における基礎知識を習得させる」など、具体的な目標を設定することが重要です。
対象者のレベルに合わせた研修内容
新卒社員のスキルや知識は一様ではありません。事前にスキルチェックなどを行い、個々のレベルに合わせた研修内容にすることで、より効果的な研修を実施することができます。例えば、ITスキルに不安がある新卒社員には、ビジネスメールの書き方やExcelの基本操作などの研修を重点的に行う、といった具合です。
研修期間・スケジュール
新卒社員は、学生から社会人へと環境が大きく変化し、多くのことを吸収しなければならない時期です。詰め込みすぎず、適切な量の研修内容とスケジュールを組むように心がけましょう。また、座学だけでなく、グループワークやOJTなど、実践的な研修を取り入れることも効果的です。
研修方法・講師選定
研修の内容や目的に合わせて、適切な研修方法や講師を選定しましょう。社内研修の場合、講師は外部の専門家に依頼することもできますし、社内の人間が担当することもできます。外部の専門家に依頼する場合は、費用対効果を考慮する必要があります。社内の人間が担当する場合は、研修の目的や内容を理解し、新卒社員に対して分かりやすく説明できる人材を選定する必要があります。
研修方法 | メリット | デメリット |
講義形式 | 多くの情報を短時間で伝えることができる。 | 一方的な情報提供になりやすく、参加者の集中力が途切れやすい。 |
グループワーク | 参加者同士のコミュニケーションを促進し、チームワークを育むことができる。 | グループのメンバー構成によって、成果に差が出やすい。 |
ロールプレイング | 実践的なスキルを身につけることができる。 | 恥ずかしがってしまい、積極的に参加できない場合がある。 |
eラーニング | 場所や時間に縛られずに学習できる。自分のペースで学習を進めることができる。 | 学習意欲が低い場合、学習が滞ってしまう可能性がある。 |
研修予算
研修には、会場費や教材費、講師への謝礼など、費用が発生します。研修計画を立てる際には、予算内で実施できる内容であるかどうかを検討する必要があります。費用を抑える方法としては、社内研修を活用したり、無料の教材を活用したりするなどがあります。
研修後のフォローアップ
せっかく研修を実施しても、それだけで新卒社員がすぐに成長するわけではありません。研修で学んだことを業務に活かし、定着させるためには、研修後のフォローアップが重要になります。効果的なフォローアップの方法としては、以下のようなものがあります。
日報・報告会の実施
研修で学んだことを日報に書かせたり、定期的に報告会を実施したりすることで、新卒社員の理解度や進捗状況を把握することができます。日報や報告会を通して、新卒社員からの質問を受け付けたり、アドバイスを送ったりすることで、新卒社員の成長をサポートすることができます。
効果測定と改善
研修の効果を測定し、改善していくことも重要です。研修の効果測定には、以下のような方法があります。
アンケートの実施
研修後にアンケートを実施することで、新卒社員の満足度や理解度を把握することができます。アンケートでは、研修内容の分かりやすさや、研修で学んだことの業務への活用度などを質問します。アンケート結果を分析することで、今後の研修内容の改善に役立てることができます。アンケートは、研修直後に実施するだけでなく、数ヶ月後、半年後など、定期的に実施することで、研修の効果をより正確に把握することができます。
目標達成度の確認
研修の開始時に設定した目標に対して、どの程度達成できたかを評価します。目標達成度は、数値化できるものと、数値化できないものがあります。数値化できるものとしては、「新製品の知識テストで80点以上取得する」「1ヶ月以内に、ビジネスメールを一人で作成できるようになる」などが挙げられます。数値化できないものとしては、「会社の理念を理解し、行動に反映できるようになる」「チームワークを意識して、業務に取り組めるようになる」などが挙げられます。目標達成度を確認することで、研修の成果を客観的に評価することができます。
5. まとめ
本記事では、中小企業における新卒社員向け社内研修の重要性と内容について解説しました。新卒社員の早期離職は、企業にとって大きな損失です。社内研修を通じて、新卒社員の不安を取り除き、企業へのエンゲージメントを高めることが、離職率低下に繋がります。
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