(2020年度)高卒採用の基本と現状の課題、これからの展望について
令和2年(2020年)12月現在、全国の約100万人の高校生のうち約16万~20万人の高校生が卒業後就職を希望しています。
令和2年度(2020年度)では、コロナウイルスの影響により求人数、求人倍率ともに大きく減る結果となりましたが、
企業の人手不足が年々深刻になっていく中、高卒採用マーケットは注目を大きく集め続けている状況です。
本記事では、そんな高卒採用の基本について詳しく紐解いていきたいと思います。
目次
(1)高卒採用とは?
(2)高卒採用の現在
(3)高卒採用が抱える課題
(4)基本的なルールについて
(5)流れとスケジュール
(6)まとめ
合わせて読みたい:改めて知りたい、高卒人材の魅力とメリット
(1)高卒採用とは?
高卒採用とは、高校を卒業後就職を希望する高校生に対して行う新卒採用のことを指します。
新卒採用の中でも一般的である大卒採用とは違い、未成年でまだまだ社会のことを知らない人材の採用になるので「ポテンシャル採用」と呼ばれることもあります。
未成年の採用となるので、主な採用チャネルである「中途採用」「大卒採用」とは違い、高卒採用だからこそ存在する独特な文化やルールを把握する必要があり、教育、育成を前提とした採用になります。
(2)高卒採用の現在
1.高卒採用の市場
高卒採用市場は、例年全国の高校3年生のうち約18%の高校生が卒業後就職を希望しており、人手不足の深刻化が進む採用市場において、年々注目を集める市場となっています。
平成20年~23年ではリーマンショックの影響により求人数が大きく減少しましたが、平成24年~令和元年にかけて景気回復と人手不足が原因で求人数は右肩上がりで増え続けてきました。(下記図参照)
令和2年(2020年)7月末現在では、コロナウイルスの影響が大きく求職者数は約16万2000人(昨対比△8.0%)求人数は約33万6000人(△24.3%)という結果となっています。
人手不足の課題が社会に在り続ける以上、2021年から先も求人数、求人倍率共にこれからも伸びしろのある採用市場と言えるでしょう。
2.高卒採用の独自の文化
高卒採用は、大卒採用などの新卒採用とは違い未成年である高校生を守ることを目的とした様々な制限やルールが存在し、独自の文化が存在します。
1.学校斡旋(あっせん)
高校生の就職活動では、学校から推薦を受けて就職活動を行う「学校斡旋」が一般的です。採用を行う企業はハローワークに求人票を提出し、受理・発行された求人票を基に高卒に求人を届け、高校生は学校に届いた求人票の中から企業を選定し、就職活動を行います。
2.自己開拓
「学校斡旋」以外にメジャーな就職活動として、学校を介さずに自らネットや就職イベントで求人を探す「自己開拓」があります。自己開拓で求人を探している高校生を採用する場合、下記の3~5のルールは適用されません。また、情報が簡単に入手できるこの時代では自己開拓を行う高校生も増えています。
3.指定校求人・公開求人
学校斡旋で高校生を採用する場合、求人を出す方法に「指定校求人」と「公開求人」の2種類が存在します。
「指定校求人」は企業側が指定した高校に在籍する生徒のみ応募が可能な求人で、学校斡旋が受けやすくなるというメリットがあります。
「公開求人」は全国の高校から応募が可能な求人で、学校斡旋の応募と同時に自己開拓の応募も見込むことができます。
4.校内選考
学校斡旋で高校生を採用する場合、企業から届く求人に対し、事前に学内で”一求人”に対し”一名”就職活動を行う高校生を選考する「校内選考」というシステムが存在します。高校生の不合格者数を減らすことと、届く求人の一定数に高校生を送り出すための慣習です。採用を行う企業は、1校あたり1名の応募、面接が基本となります。
5.一人一社社制
学校斡旋で高校生を採用する場合、大卒採用とは違い、基本「一人一社」しか応募を行うことができません※1。高校生は一社選考を受けて内定をもらった場合、家庭の事情などの大きな理由がない限り就職活動を終了します。不合格になった場合、次の一社を決めて就職活動を再開するといった、未成年である高校生を守るためのルールです。
※1.例年10月1日~は複数応募可、地域によっては応募解禁時から複数応募可
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(3)高卒採用が抱える課題
1.高卒採用の独自の仕組みによるミスマッチ
高卒採用は前途した通り未成年の採用活動となるため、「学校斡旋」や「一人一社制」といった未成年を守るための独自の文化やルールが仕組み化されています。高校生は学校斡旋を受けて就活をする場合、一人一社しか応募を行うことができないため必要なだけの求人比較が行えないまま内定を迎えることとなり、企業は学校を介しての採用活動になることから高校生に伝えたいことが伝えきれない状態で内定を出すことになります。
そのため、高校生と企業の間に大きなミスマッチが生まれてしまっていることが現状の大きな課題と言えるでしょう。
2.高卒の離職率
例年、高卒社員の3年以内の離職率は約40%で、大卒社員の3年以内の離職率である約33%と比較して6ポイント高く、他採用チャネルと比較しても離職率が課題と言えます。
特に1年目の離職率が高く、高卒社員が約17%、大卒社員が約12%となっており、上記でも説明した「ミスマッチ」から発生している課題であると言えそうです。
また退職して非正規雇用となりやすい(高校卒者で36.2%、大学卒者で25.3%と実に10%以上の差がある)という事実を、より大きな社会課題として捉えられます。
高卒採用では、現在の文化やルールが原因で上記のような課題が生まれています。企業側は、求人サイトや求人イベントに積極的に参加するなどミスマッチを減らしながらより多くの高校生に求人を届けられる工夫を行い、自社で活躍してくれる人材を採用する企業努力が必要となってきます。
(4)基本的なルールについて
高校生の就職では、健全な学校教育をまずは最優先させた上、適正で公正な就職の機会を与えられるため、未成年である高校生を守るために「三者協定」により様々な独自のルールが存在します。
ここでは、高卒採用の基本となるルール5点を紹介します。
1.学校斡旋と自己開拓
「学校斡旋」では、採用を行う企業はハローワークに求人票を提出し、受理・発行された求人票を基に高校に求人を届け、高校生は学校に届いた求人票の中から企業を選定し、就職活動を行います。
「自己開拓」では、学校を介さずに高校生が自ら求人サイトや就職イベントで求人を探し、就職活動を行うことです。情報が簡単に入手できるこの時代では自己開拓を行う高校生も増えており、2021年より先は更に自己開拓を行う生徒が増えることが予想されます。
2.一人一社制
高校生の就職活動では大学生とは違い、基本「一人一社」しか応募を行うことができません※1。高校生は一社選考を受けて内定をもらった場合、家庭の事情などの大きな理由がない限り就職活動を終了します。不合格になった場合、次の一社を決めて就職活動を再開するといった、未成年である高校生を守るためのルールです。内定辞退率が大卒採用と比べてもかなり低い要因はここにあります。
※1.例年10月1日~は複数応募可、地域によっては応募解禁時から複数応募可
3.求人票の作成
高校の紹介を受けて高卒採用をするには、まず「ハローワーク(職業安定所)」への求人票の登録が必要です。求人票の登録は一般(中途やアルバイト)の枠とは違い、高卒新卒専門の求人票があります。
ハローワークに申請した求人情報は「高卒就職情報WEB提供サービス」と求人票に落とし込まれます。企業はこの求人票を元に、先生や生徒に求人情報を届けることになります。
4.採用フロー
学校斡旋で採用活動をする企業は、ハローワークから許諾された求人票を使い、学校を通じて求人情報を提供します。企業から郵送や訪問を通して受け取った求人情報を元に、学校の進路指導教員は生徒に情報提供します。そして、生徒は情報が提供された中から志望する企業を選定し、学校を介して職場見学や応募、面接のやり取りを行います。(2020年12月現在)
採用フローやスケジュールを厳格にする目的は、学業優先のため、仕事に関する知識・経験に乏しい高校生が適切な職業選択ができるよう、円滑に就職活動を進めるためのものです。
一方で、紹介する教員のフィルターが発生し、生徒に届く情報量が少なくなったり、選択肢の幅が狭くなるといった課題も指摘されています。
5.面接
高校生の就職では「本人の能力と適性」に直接関係のない事項を採否決定の判断基準とはしてはならないというルールがあります。(2020年12月現在)
注意すべき点は「就職差別に繋がるおそれのある質問」を行わないことです。もしも下記に該当する質問を面接内で行ってしまい、学校からハローワークに通知がいってしまった場合、指摘が入る可能性があるので注意しましょう。
<面接で聞いてはいけない項目>
1. 国籍・本籍・出生地に関すること
2. 家族に関すること(※要注意)
3. 住宅状況に関すること
4. 生活環境・家庭環境に関すること
5. 宗教に関すること
6. 支持政党に関すること
7. 人生観・生活信条等に関すること
8. 尊敬する人物に関すること
9. 思想に関すること
10. 学生運動や労働組合等の社会活動に関すること
11. 購読新聞・雑誌・愛読書に関すること(※要注意)
12. 身元調査の実施
13. 「全国高騰学校統一応募容姿」に基づかない事項を含んだ応募書類の使用
14. 合理的・客観的に必要性が認められない採用選考時の健康診断の実施
(5)流れとスケジュール
高卒採用の年間活動スケジュールは、大卒採用とは動き方が異なり、行政・主要経済団体・学校組織の三者による協定によってルール化されています。企業は、高卒採用のルールを理解した上で活動を行うことが求められます。
都道府県や高校によっては、年間のスケジュールが若干異なる場合もありますが、全体的な活動スケジュールはほとんどが以下の図のような流れになります。(2020年卒採用時のスケジュール)
(6)まとめ
高卒採用は大卒採用とは違い、未成年を採用対象とした新卒採用です。
それに伴い、独自の文化やルールが根付いており、高校生や企業ともに活動に制限があります。
それに乗じ発生するミスマッチと早期離職、企業は求人サイトや求人イベントに積極的に参加するなど、より多くの高校生に求人を届けることと、企業について具体的に知ってもらえるような工夫が必要になります。
まだまだ、課題が多い高卒採用市場ですが、人手不足の深刻化が改善されない限りは2021年から先も求人数が増えていく市場になっていくでしょう。
本記事で、高卒採用について少しでも知っていただくことができていましたら幸いでございます。
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