「通年採用」や「新卒枠廃止」!? 変わりゆく採用活動
経団連は2018年10月、「就職活動のルール」を廃止(※)することを宣言しました。
長きにわたる採用慣習の歴史が終わることになります。
※突然の廃止は企業・学生双方の混乱を招きかねないことから、21年卒からは政府が主導でルールを定めることになりました。政府は22年卒までのスケジュールについて、広報活動を大学3年の3月から、採用選考活動は大学4年の6月からとする日程の順守を求めています
高卒採用Labでは高卒採用に限らず「若手採用」に関する情報を発信しています。その中でも「就職活動のルール廃止」はとても大きなニュースでした。
今回は大卒の就職活動のルール廃止に伴う影響や、今後の採用活動について考えます。
就活ルールの廃止が与える影響
そもそも「就職活動ルール」やそれを含めた「新卒一括採用」というのは世界的に見て日本固有の特徴的なものでした。「新卒一括採用」は「年功序列」や「終身雇用」と密接ですが、それらはもはや崩壊しはじめており、採用・就職のルールが変化するのも自明と言えます。
では、就活ルールが廃止になると、企業の採用活動(学生の就職活動)はどう変化するのでしょうか?
早期化と長期化
おおよそ採用活動は早期化すると予想されます。実際、就活ルールが廃止されなくとも早期化は進んでいます。
早期化は長期化を意味します。企業にとって採用活動が長期化するということは、それだけ人手とお金が多くかかるということです。
ただでさえ、ここ数年、人材獲得競争によって新卒採用コストは上昇しており、これに拍車をかけることになりそうです。
出典:リクルートキャリア 就職みらい研究所「就職活動白書 2019」
弊害も生まれています。
採用に必死な企業は、とにかく自社に採用したいという思いがいきすぎてしまい、学生に圧力をかけるようになっています。
2019年度の調査では、”オワハラ(就職活動終われハラスメント)”に関して「内々定の段階で内定承諾書の提出を求められた(内定承諾書を提出しない場合は、内々定を辞退したものとみなすと言われたなど)」「内々定を出す代わりに他社への就職活動をやめるように強要された」など、約3割の大学が学生から相談を受けたという結果となりました。
出典:文部科学省 2019年度 就職・採用活動に関する調査(大学等)
学業への懸念
一方学生にとっては、学業への影響が懸念されます。
新卒採用スケジュールの変遷を辿れば、ここ数年は、卒業前年の3月が広報活動の解禁となっており、それまでよりは学業への影響が少ないと感じる大学があったようですが、今後はまた以前の状況に戻ってしまうかもしれません。
〇広報活動開始時期が卒業・修了前年度の3月1日以降であることが続いていることによる影響を尋ねたところ、以下の項目で「良い影響があった」「どちらかというと良い影響があった」と回答した大学等の割合が高かった。
・卒業・修了前年度までの、学生の授業やゼミの学修時間の確保 29.6%
・学生が学部3年次の後期試験に落ち着いて取り組むこと 29.6%
・学部3年次の後期授業への出席 29.1%
・卒業・修了前年度までの、学生のキャリア教育の時間の確保 27.2%
・卒業・修了前年度までの、海外企業や国際機関も含め、学生のインターンシップの参加促進 26.9%
〇昨年度と比較すると、良い影響があったとの回答が、悪い影響があったとの回答を大きく上回っていることは変わらない。
出典:文部科学省 2019年度 就職・採用活動に関する調査(大学等)
通年採用を実施する企業が続々
就活ルールの廃止により、通年採用を行う企業が増えるとも予測されています。
実際に、就活ルール廃止宣言よりも前から通年採用を行っている企業もあります。合わせて新卒採用という枠をなくして採用活動を行なっている企業もあります。
以下にいくつか例を挙げます。
株式会社ユニクロ
通年採用
https://www.fastretailing.com/employment/ja/fastretailing/jp/graduate/recruit/allyear/
1年中いつでも応募を受付。学年、新卒・中途、国籍を問わないオープンな採用方法。大学1年生、2年生でも応募が可能。
選考を通過すると「ユニクロパスポート」が発行される。発行から3年以内はこのパスポートを提示すれば、いつでも最終面接を受けられる。
ヤフー株式会社
ポテンシャル採用
https://about.yahoo.co.jp/hr/job-info/
応募資格は、応募時30歳以下で、入社時18歳以上。学歴、新卒・既卒、就業経験の有無に関わらず応募できる。
株式会社ユーグレナ
30歳以下であれば誰でも応募可能
https://www.euglena.jp/recruit/new/information/
<新卒・既卒の方>
2021年度採用:2021年4月または10月に入社可能であること
2020年度採用:2020年4月または10月に入社可能であること
<第二新卒の方>
2021年度採用:2021年4月、7月、10月、2022年1月のいずれかで入社可能であること
2020年度採用:2020年4月、7月、10月、2021年1月のいずれかで入社可能であること
これまでのスタイルとは大きく異なる募集内容です。
一括採用と違い、通年採用にあるメリットとはどういったものでしょうか?
一括採用の場合は入社のタイミングが年に1回となるので、企業が必要なタイミングでの採用が難しいということ(ただし通年採用といっても多くは入社タイミングは年に数回としている企業が大半です)、また「留学経験者」や「外国人」など9月卒を採用しやすくなるということもあります。
そして何より、「就職活動」という横並びでの応募よりは、自社への志望度や就職に関する意識が高い応募者が現れるのではないかと思われます。
応募に期限がないということはメリットにもデメリットにも働きますが、学業と就職活動を並行することや、期限ありきで進む道を決めなくてはならないことを考えると、一括採用は学生への負荷が高いかもしれません。
これからの採用に求められるものは?
さて、就活ルールの廃止の影響、多様な人材確保の方法としての「通年採用」や「新卒枠の廃止」がありますが、とはいっても、これからも一括採用はなくらないでしょう。
なぜならば、一括採用では「決められた時期に一定の人数を確保できる」や「時期ごとに採用活動が定形化されていて効率的」があるからです。
特に中小企業にとって、通年採用は「コスト面」「自社の知名度」の点で選択しづらい手法とも言えます。
しかし通年採用はさまざまなことを示唆しています。
「終身雇用」や「年功序列」のない時代、働き手もこれまでと考えを変えなければいけません。
たとえば、「転職」は珍しいことではなくむしろして当たり前のこと、となると、最初に就職した会社や特定の一社にある固有の社内ルールに染まり切ってしまうのは危険と言えます。「つぶしがきかない」人材になってしまうからです。
裏返せば、新卒採用のメリットに「他社の風習などに染まっていないフレッシュな人材を確保できる」を挙げる企業は多いですが、今後はそのメリットを享受できる機会はこれまでよりも少ないかもしれません。
また、新卒の離職率の高さ(特に3年以内)は、企業からするとかけた採用コストや教育コストが無駄になってしまうということです。新卒は「即戦力ではないが染めやすいので良い」という考え方を改める機会なのかもしれません。
ダイバーシティが経営に叫ばれて久しい昨今、採用方法も時代の変化に少しずつ対応してきています。
学歴や年齢、価値観など、これまでの「枠」を取り外した採用手法がこれからは主流になるのではないでしょうか。
またその根本として、自社にはどのような人材が必要なのかを再確認する必要があると考えます。
まとめ
経団連は「就職活動のルール」の廃止を宣言しました。人材流動性が高まる中、企業はこれまでの一括採用の見直しをしています。
しかし、ルールを廃止したからといってすぐに何か大きな変更があるわけではありません。また、そもそもルールとは関係なく採用活動を進めている企業の存在も確かです。
「就職活動のルール」とは関係なく、新卒採用活動の早期化や、通年採用の実施、新卒年齢の引き上げなどの変化が見られます。
学歴や年齢、価値観など、これまでの「枠」を取り外して採用戦略を考える必要があると言えます。
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