母集団形成とは? 新卒採用での重要性や実現の方法を解説
「母集団形成」とは、企業が採用活動を行う際に重要となる考え方です。採用担当者が募集の段階から意識することにより、目標とする採用計画を達成できます。この記事では母集団の意味から説明し、採用時に「母集団形成」を行うメリットや方法まで、詳しく解説します。
1、母集団形成の意味
そもそも母集団とはなんでしょうか。あまり耳慣れない言葉ですが、それもそのはず。元々は統計学の専門用語であり、簡単に言えば「何らかの調査を行う上で、調査対象となる特徴を持つものすべて」のことを指します。たとえば、新卒学生の志望傾向を調べる調査であれば新卒学生全体が母集団ということになります。
これが転じて、採用活動で言う「母集団」とは、「自社の求人に興味を持つ学生すべて」のことです。つまり母集団形成とは、自社の求人に興味を持ってくれる学生を集めることを指しています。
2021年現在、少子化の進行によって新卒・高卒市場は売り手市場となりつつあります。説明会や応募の時点では多数の学生が参加していても、選考が進むにつれて辞退者が増えるのは今や当たり前のことです。目標人数分、質の高い学生を確保するためにも、母集団形成を行うことは不可欠と言えます。
母集団形成の注意点
ただ、注意したいのは「とにかく応募者数を増やせばいい」というわけではないということです。いくらたくさん応募者を集めても、本当に自社に適している人材を集められなければ、目標となる採用数を満たすことは難しくなります。
仮に無理やり必要な人数を採用したとしても、入社後にミスマッチを引き起こすことになりかねません。現場に配属されたけれど、期待したようなはたらきが見られないばかりか、早期に離職してしまった…ということでは、自社はもちろん、その学生にとっても大きな損失です。
母集団形成を成功させるためには、
・ペルソナ(採用したい詳細な人物像)を具体的に設定すること
・自社の雇用条件や社風にフィットすること
などを意識しながら、量・質の両面を意識しながら採用活動を進めていく必要があります。
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2、母集団形成が重視される背景
ところで、なぜ母集団形成が重視されるようになったのでしょうか。これには少子高齢化が大きく影響しています。国立社会保障・人口問題研究所が毎年発表している人口統計資料集(2021年版)によれば、生産年齢人口(ここでは20〜64歳の人口のこと)は約6841万人。最も多かった1990年に比べ700万人以上も減少しました。
参照元:http://www.ipss.go.jp/syoushika/tohkei/Popular/P_Detail2021.asp?fname=T02-09.htm
少子化によって採用市場に供給される新卒・高卒の学生が減少し、売り手市場へとシフトしているのです。今後もこの年齢層は減少することが予想されており、45年後の2065年にはわずか4189万人になってしまうとされています。つまり、劇的な社会の変化がない限りは、現在の売り手市場傾向が今後も続くと見てよいでしょう。他社に優秀な人材を奪われないためにも、自社を志望する質の高い新卒人材の母集団形成を進めることが非常に重要です。
質の高い母集団形成を進めるための方法のひとつに、高卒採用があります。高卒生は大卒生に比べて知識・経験に乏しいことが課題です。しかし、大卒生に比べて高いポテンシャルを秘めているほか、大卒生より4年分長く実務経験を積めること、多くの企業が大卒生の採用に注力しているため、高卒生をターゲットとしていないといったメリットがあります。つまり、ほかの企業が注目していない優秀な人材を確保できる可能性があるのです。
また、高卒生の採用プロセスには「一人一社制」というものがあります。これは学業に支障をきたさないようにするため、求人への応募解禁日から一定の期間中、応募数を1人あたり1社に限定するという決まりです。一人一社制によって、高校生は就職活動に過度な負担を強いられることがなく学業に集中できます。しかし、一方で「希望する会社を選べない」「高校生が主体的に企業を選べない」などの課題があるのも事実です。
この状況を受け、文部科学省は「 就職にかかる指導、制度・慣行等の今後の在り方」という答申において一人一社制や指定校制度といったこれまでの慣例を見直す必要について触れており、今後高校生の求人においても大学生同様、一人が複数社に出願するような動きも増えてくることが予想されます。
参照元:https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/008/toushin/010201b.htm
実際、産経新聞の報道によれば、大阪府では2021年度から一人一社制を撤廃することを発表しました。
参照元:https://www.sankei.com/article/20201022-577PHBL3XRJ7TKVGBFKKACVMNA/
多くの人口を抱える大阪府がこのような動きを見せたことで、多くの都道府県で追随する動きが出てくることも十分に予想されます。裏を返せば、これまでそれほど広報活動が重視されてこなかった高卒求人でも、優秀な高校生を必要な人数だけ確保するための競争が発生する可能性が高まっているということです。
今後の高卒求人では、これまでのような指定校に頼った採用だけでなく、母集団形成を意識し、他社に対して有利に立てるような採用活動を進めていく必要があると言えるでしょう。
あわせて読みたい:高卒採用の「一人一社制」ってどんなルールなの?
3、母集団形成のメリット
では、なぜ母集団形成を進めれば採用活動で有利に立てると言えるのでしょうか。ここからは、母集団形成を行うことによる具体的なメリットを解説します。
計画的に採用できるようになる
企業にとって、中長期的な採用計画を立てることは重要です。しかし、志望者数が不十分で、ニーズにあった志望者が少ない状況では思うように採用計画を立てられません。採用にあたって目標を設定し、ターゲットとなる高校生を十分に確保しておくことで、はじめて計画的な採用が可能になります。
採用コストを削減できる
採用活動にかかるコストを正確に予測できることも大きなメリットのひとつです。母集団形成が不十分な状況で選考を行った場合、自社に必要な採用人数を満たせなければその後も長期にわたって新卒採用を続けなくてはなりません。ペルソナに沿った母集団形成を適切に進めることで、高卒採用解禁後、短期間かつ無駄なコストをかけずに必要な数の人材を確保できます。
採用のミスマッチを防げる
ミスマッチを防げることも大きなメリットです。志望者が十分に揃っていない状況では、採用予定数を確保するために、自社が求めるものとは異なる人材も採用せざるをえません。このような状況では、早期の離職や思うように活躍できない人材が多く出てしまうことも予想されます。適切な母集団形成によって、活躍する人材を多く生み出すことができ、自社の業績アップにもつながります。
4、新卒採用における母集団形成のステップ
母集団形成のメリットはおわかりいただけたかと思います。しかし、ここで疑問になるのは「どうすれば適切な母集団形成ができるのか?」ということ。ここからは、高卒採用を進める上での母集団形成について、ステップを踏んで解説します。
ペルソナを明確にする
そもそもペルソナとはなんでしょうか。ペルソナとは元々マーケティング用語で、「サービス・商品の典型的なユーザー像」のことを指します。これが転じて採用活動におけるペルソナとは、「自社が求める詳細な人物像」のことを指します。
引用元:https://ferret-plus.com/8116
単に「18歳、高校生」というターゲットだけではなく、趣味や生活習慣、部活動、学校での役職といった、より細かい部分を設定した自社が採用したい明確な人物像がペルソナです。
まず母集団形成を行う上では、ペルソナが社内で検討され、統一されている必要があります。ペルソナが明確でない状況では、どのような人材を採用すればいいかわからないまま採用活動を行うことになってしまいます。また、人事担当者と現場の間でペルソナが統一されていなければ、入社後のミスマッチを引き起こすリスクになってしまいます。まずは、「自社内にどのような課題があるか」からスタートし、「この課題を解決するためにはどのような人材が必要か」「なぜこのような人材を確保する必要があるのか」のように採用の目的を明確にした上で、目的にあったペルソナを設定する必要があります。
採用計画を立てる
ペルソナの設定ができたら、次は採用計画を立てます。どのようなペルソナを設定するかによって、採用のスケジュールは大きく変化します。特に高校生の場合、現状では採用活動の解禁時期が設定されていることもあり、大学生に比べてスケジュールに制約があることも特徴です。
高卒求人のスケジュールについてはこちらを参考にしてください。
徐々に緩和が進んでいるとはいえ、部活や定期試験、日々の授業など、高校生の学校生活は自由になる時間が少なく、採用スケジュールにはある程度制約がかかる状況が続くと予想されます。自社のスケジュールはもちろん、高校生のスケジュールについても情報収集を行い、採用予定日から逆算してスケジュールを考えていく必要があります。
また、スケジュールの策定と同時に情報収集も欠かせません。SNSやインターネットの発達した現代では、新しい情報が入ることでペルソナの動きが大きく変化することも考えられます。流行に敏感な高校生に対して適切な広報活動を行うことで、志望者の人数を大きく増加させられる可能性もあります。その時のペルソナにあった広報活動を明確にするために、継続的に情報収集を行い、分析しておくことも重要です。
採用活動の実施・改善
ここまでくれば、あとは採用計画や事前のリサーチに基づいた採用活動の実施です。事前に分析した結果をもとに、設定したペルソナに響くような広報活動を行いましょう。また、PDCAサイクルを回すことも忘れてはいけません。計画し、実行した採用活動について検証し、次年度以降への改善点を検討することも重要です。今年度見つかった課題を洗い出し、改善案を検討することで採用活動をより洗練されたものにしていくことができます。
5、主な母集団形成の方法とメリット・デメリット
母集団形成を実施する上では様々な方法があります。それぞれについて、メリットやデメリットを解説します。
求人サイト(就職サイト)
求人サイトでの募集は、もっとも身近な方法です。求人サイトには多くの学生が登録しているだけでなく、運営企業によるテンプレートが設定されているため、採用側の負担が小さいことも特長です。一方で、非常に多くの企業が登録していることからプロモーションによる差別化、あるいは有料オプションの使用を考える必要もあります。
また、高校生を対象とする求人サイトは少なく、まだまだ課題の多い状況です。そんな中ジョブドラフトは高卒求人に特化した求人サイトであり、高校生に対するアプローチに強みを持っています。また、高卒生の採用について、経験豊富なコンサルタントからアドバイスを受けることもできます。
自社採用サイト
自社採用サイトを持つこともひとつの手です。自社採用サイトとオウンドメディアなどを合わせて運用することで、自由度の高い採用活動を行えることが大きなメリットです。その反面、毎年継続的に情報のアップデートを行う必要がある上、運営を行うための人材確保に大きなコストがかかることがデメリットと言えます。
大企業では自社サイトを活用することで母集団形成を適切に進めることができますが、中小企業ではサイトの運営にコストがかかり、かえって大きな課題になることも考えられます。また、高校生をターゲットにする場合には、高校生の目に届くようなプロモーションを打つことも考える必要があるでしょう。
合同説明会
最後に合同説明会についても解説します。合同説明会では「大学生」「高卒生」「理系」「文系」などといった枠組みで参加者を募集するため、ペルソナに近い志望者に対して直接アプローチしやすい点がメリットです。近年ではオンラインでの説明会も増加しており、これまでデメリットとなっていた遠方の参加者を集めることが難しいという点も改善されつつあります。とはいえ、一定の時間で自社のプロモーションを行う必要がある点に変わりはありません。事前に十分な準備を行なって説明会に臨めるかどうかが、採用活動の成否を分けることになるでしょう。また、高卒生向けの合同説明会は非常に少なく、そもそもアピールする場がないという課題もあります。
では、高校生と企業が直接交流することができます。高卒生は求人票を見て志望企業を探すことが多い中、企業と高校生が実際に出会って、ジョブマッチングを進めることができるという点が大きなメリットです。また、就職活動に慣れていない高校生のために運営スタッフが生徒の相談に乗る
など工夫がされており、高校生がより多くの企業と出会えるようになっています。
SNSの活用
高校生がよく使用するSNSでのプロモーションも、母集団形成には効果的です。LINEのような主に連絡に使われるSNS、TwitterやInstagramといった短文や写真を中心にしたSNSだけではなく、TikTokのような動画がメインのSNSもあり、それぞれに合った広報活動を行うことにより、応募者の増加を狙えます。たとえば東京工科大学の2021年度新入生向けに行われた調査では、LINEの利用率が99%を上回る非常に高い利用率となっているほか、女子ではInstagramの利用率(85.6%)がTwitter(85.3%)を上回るなど、大きく勢力を伸ばしつつあるようです。また、前述のTikTokや、ゲーム時の通話やチャットに利用されるDiscordといった新しいSNSツールの利用率も伸びています。一方で、Facebookは年々シェアを落としつつあるようです。
参照元:https://edtechzine.jp/article/detail/5699
このような情報を柔軟にキャッチアップし、それぞれの媒体にあった広報活動を行うことがSNSでの採用活動では重要になります。
SNSを活用し、目標とするペルソナに対して情報をうまく拡散させることができれば母集団形成の弾みになるでしょう。特に近年は利用者の増加により、うまくいけばひとつの投稿が数十万人以上の目に留まる可能性もあります。一方、不特定多数の目に留まるということも考えなければなりません。コンプライアンス面では他の媒体以上に気を配る必要があります。誰かを不快にさせる表現がないか、誤った表現をしていないかといった点には十分に注意しましょう。
また、まだまだ黎明期の媒体も多く、どのように利用するかといったガイドラインのようなものも明確ではありません。大きな強みを持つ一方で、課題の多い方法であるとも言えそうです。
まとめ
少子化が進行し、売り手市場となっている現代日本の採用活動において、適切な母集団を形成することは採用市場を勝ち抜くために必要不可欠です。特に高卒生に対する採用活動は大卒生に比べ難しく、自社だけでは母集団形成がうまくいかない可能性もあります。しかし、高卒生の採用に対して国内トップクラスのノウハウを持つジョブドラフトであれば、各企業の状況に合わせて、良質な高校生の母集団形成をサポートすることができます。高卒採用に悩む企業担当者の方は検討してみてはいかがでしょうか。
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