県外で就職する高卒者は少ない?厚生労働省のデータを元に解説
大卒と比較すれば「地元志向」が強いのが高卒新卒の特徴です。
もちろん「就職と同時に上京したい」など、地域外での就職を希望する学生もいます。
人手不足の課題感は、企業規模が小さいほど強く、都市部より地方が強いという状況です。
そのため、地方では、自治体等が地元企業の魅力発信を強化し、学生に対して「地元就職」という選択を紹介しています。
今回は「エリア」の観点で高校生の就職の動向を考えていきます。
県外の高卒就職者を自社で採用する場合に考慮するべき点についても解説しているので、この記事をもとに対策をしましょう。
目次
高卒者の県外就職の現状
実際に高卒者の県外就職状況はどうなっているのでしょうか?
下図は年度別の高卒者県外就職率のグラフです。
令和4年度の高校生の県外就職人数は25,426人でした。
全体で見ればこの5年で県外就職率は1.9%の減少、人数にしておよそ10,500人弱の減少となります。
一時は、上昇傾向にあった県外就職ですが、地元企業の努力やコロナによる地元思考の増加の影響で、ここ数年は減少傾向にあります。
また男女に分解した場合の高卒の県外就職率はどうでしょうか。
もともと、男子学生のほうが県外就職率が高くありますが、男子学生は2.1%の減少、女子学生は1.9%の減少となりました。
下図は男女別の高卒県外就職率のグラフです。
補足として都道府県レベルで見てみると
・県外就職率が高い都道府県:熊本県(37.6%)、宮崎県(37.5%)、青森県(37.4%)、鹿児島県(35.5%)、奈良県(33.6%)
・県外就職率が低い都道府県:愛知県(4.1%)、富山県(5.9%)、滋賀県(8.1%)、北海道(8.1%)、静岡県(8.1%)
となります。
高卒県外就職者の都道府県の関係
上記の表は県外就職をした生徒の在学中の都道府県と、就職先の都道府県を表にしたものです。
※左軸は流入が1500以上で赤、1000以上で黄色、500以上で緑
当たり前ですが、県外就職先として選ばれるのは「主要都市」です。各地方の中心で企業が集積するため求人も多く、生活環境としても若い層には魅力的に映ります。
圧倒的に県外就職先として選ばれる東京都
実に県外就職者の1/3弱は東京都を就職先として選択、一極集中です。
東京都には全国からやってきますが、顕著なのは関東以北からの流入。
北関東や、東北からの県外就職者が多いことが見て取れます。
続いて、九州地方からも流入が多いのが特徴です。東京都が県外就職先として選ばれる理由としては、就職先の多さ(全国1位)や給与の高さ(全国1位)が理由です。
愛知県は近隣、九州からの県外就職が多い
愛知県は、県外就職先人数2位と、県外就職先として非常に選ばれやすくなっています。一方で県外就職率は、4.6%と47都道府県中最も低い水準です。
愛知県から県外への就職は、あまりないと言えるでしょう。
愛知県が県外就職先として人気の理由は以下の通りです。
- 国内有数の有名企業が多数存在(全国3位)
- 年収アップが見込める(全国6位)
- 東京都・大阪府よりも転職難易度が比較的低いと考えられる(令和4年4月の有効求人倍率 東京都1.18倍、大阪府1.02倍、愛知県1.36倍)
県外就職先人数3位の大阪
大阪府にやってくる生徒は、兵庫県、奈良県、和歌山県からが圧倒的に多くなっています。
東海以北からの県外就職はあまり見られません。
また、中四国地方、九州地方ではそれぞれ広島県、福岡県が県外就職先として選ばれやすく、大阪府も一定の流入はありますが、強く選ばれているわけではないことがわかります。
大阪府が県外就職先として人気の理由は以下の通りです。
各地方の中心都市
東京・愛知・大阪に続いて県外からの就職先と人気の都道府県は以下の通りです。
都道府県 | 県外就職先として人気の理由 |
福岡県 | 大企業の支店や工場が多くあり、大阪や東京よりも生活コストが少ないため |
神奈川県 | 企業数が多く、東京都と比較すると生活コストが低いため |
埼玉県 | 大企業は少ないが、求人数は全国7位であり、就職先が多いため |
宮城県 | 求人数は全国14位と多く、東北からの移住がしやすいため |
高卒者の県外就職が難しい理由
県外の高校生の採用強化をしたい企業にとっては、高校生が県外に就職しづらい要因を理解することが必要です。
高卒者の県外就職が難しい理由として、以下が挙げられます。
- 県外まで情報が届かない
- 周囲に反対されることがある
- 県内就職よりも費用がかかる
- 県外での生活への不安がある
それぞれ理由を確認していきましょう。
理由1.県外まで情報が届かない
高卒者の県外就職が難しい理由の一つとして、県外の企業情報や求人情報が十分に届かないことが挙げられます。
地元の学校や地域の求人情報は容易にアクセスできますが、遠隔地の情報は入手が難しく、求人広告や企業説明会などの情報が限られてしまうためです。
また、遠方の企業が地元の学校や地域に求人情報を提供する際には、交通費や時間の制約があるため、情報が伝わりにくいことも影響しています。
そのため、高卒者にとって県外の企業を知る機会が減り、地元の企業への就職が一般的になってしまうでしょう。
さらに、県外就職を検討している高卒者に対しても、遠方の企業とのコミュニケーションが難しいことが課題となります。
例えば、企業説明会や面接などの選考過程で遠方まで足を運ぶ必要があるため、費用や時間の負担が大きくなります。
高卒者専用の求人サイトなどを活用して、積極的に県外の学生に情報を届ける努力が必要です。
理由2.周囲に反対されることがある
周囲に反対されることも高卒者の県外就職におけるハードルとなっています。
具体的には、親や友人から県外就職に対する懸念や不安を指摘されることが挙げられるでしょう。
親は子供の将来を心配して、地元での安定した就職先を望んでいる傾向があります。
また、友人たちは地元でのつながりを大切にし、一緒に働くことを期待している場合があります。
これらの意見により、高卒者自身が県外就職に対するネガティブなイメージを持ってしまうことで、県外就職が難しい場合があるでしょう。
理由3.県内就職よりも費用がかかる
引越し費用や生活費が余計にかかってしまうことは、高卒者が県外就職をする障壁となっています。
県内就職であれば、親元を離れる必要がなく、引越し費用・生活費ともに節約できるためです。
企業によっては、福利厚生の一環として引越し費用の補填や家賃補助などを行っているケースもあります。
その場合は、県外からでも就職者を集められるでしょう。
理由4.県外での生活への不安がある
県外での新たな生活に対する不安は高卒就職者にとって大きなハードルとなるでしょう。
地元を離れて県外で働くと、慣れ親しんだ場所や人々と離れることになります。
特に大卒就職者とは違い、これまで県外の人と接した経験が少ない高卒就職者からすると、大きな問題です。
企業側としては、新たな地で生活を始める高卒就職者に対して、新生活や人間関係構築のための手助けをしたりと気遣うことが重要です。
地方高校生の採用を検討する場合の注意点
「寮完備」「選考にかかる交通費負担」など、地方学生の採用を強化する企業が増えています。
しかしやみくもに日本全国に活動範囲を広げても採用するのは難しいかもしれません。
県外就職を選択するとき、高校生には物理的な距離と心理的な距離があり、選びやすい都道府県が存在するものです。
高校訪問や、受け入れ後の環境整備には、こうした地域の特色を踏まえて行うのが良いでしょう。
高卒者の県外就職についてのまとめ
大卒者とは違い、高卒者の県外就職には様々なハードルがあります。
県外の高卒採用を検討する場合は、生徒の物理的な距離と心理的な距離を理解し、地域ごとの特色を踏まえて活動しましょう。
一方で、「地元に根ざした人材が欲しい」と考えている企業にとって、高卒採用は最適です。
本記事でも解説したような「情報の伝達」「周囲の反対」「就活費用」「生活環境」などの面で圧倒的に県内就職の方が応募しやすいためです。
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