高卒の3年以内離職率36.9% 定着率が高い会社の事例と離職率を下げる方法 | 記事一覧 | 高卒採用Lab 高校生採用を科学する

高卒の3年以内離職率36.9% 定着率が高い会社の事例と離職率を下げる方法

厚生労働省が令和3年に公表した、新規学卒就職者の就職後3年以内の離職状況によると、高卒就職者では36.9%、大卒就職者は31.2%との結果になりました。この数値から読み取れるのは、高卒人材の離職率が高い事実です。本記事では、高卒人材の離職率が高い原因や、定着率を高めるポイントなどを解説します。


1.高卒の早期離職率が高さの原因は、採用時にミスマッチが起こっている!?

高卒人材が早期に離職してしまうのには、何かしらの理由があると考えられます。では、実際のところどのような理由で離職の道を選択してしまうのでしょうか。

厚生労働省が発表した「平成30年若年者雇用実態調査の概況」の「初めて勤務した会社をやめた主な理由」では、高校卒と大学卒とで以下のような結果でした。

高校卒:

1位 人間関係がよくなかった(29%)
2位 労働時間・休日・休暇の条件がよくなかった(28.7%)
3位 賃金の条件がよくなかった(26.1%)
4位 仕事が自分に合わない(22.2%)

大学卒:

1位 労働時間・休日・休暇の条件がよくなかった(33.2%)
2位 人間関係がよくなかった(21.3%)
3位 賃金の条件がよくなかった(20.9%)
4位 仕事が自分に合わない(19.2%)

職場における人間関係は、組織への居心地を決定づけるポイントのひとつです。データを見ると、離職理由として高校卒、大学卒どちらも1、2位に人間関係が入っていることから、いかに離職との関係性が大きいか理解できるでしょう。

また、高校生は大学生のように自由な就職活動ができるわけではありません。複数社を比較しながら就活をおこなうことができず、求人票にも最低限の情報しか記載されていないため、どのような企業かよくわからないまま就職してしまうケースもあります。企業に対する理解が少ないまま入社してしまうと、仕事が合わない、労働時間が賃金などの条件が合わない、となり離職につながります。職場の人間関係になじめなければ、なおさら居心地が悪くなり職場を去ろうと考えるでしょう。

逆に、上記のような課題を解決できれば、高校卒人材の離職を食い止められます。賃金や休日などの待遇を改善し、十分な情報を事前に提供できれば、ミスマッチを回避できるでしょう。また、従業員同士のコミュニケーションを活性化させる取り組みにも着手すれば、人間関係を理由に職場を去る人が少なくなるかもしれません。高校卒人材の離職防止と職場への定着化は、取り組み次第で実現できます。優秀な人材の流出を食い止めるためにも、ポイントを押さえた取り組みを始めましょう。

2.定着率が高い会社・低い会社の特徴

従業員が長く在籍し続ける会社もあれば、すぐに辞められてしまう会社もあります。この2つはいったい何が違うのでしょうか。定着率が高い会社と低い会社、それぞれの特徴を見てみましょう。

定着率が高い会社の共通点

定着率が高い会社は、「ここで長く働きたい」と思えるような組織です。人によって会社に求めるものは異なりますが、ここで働きたい、と思える組織であれば、早期に離職されることは少ないでしょう。定着率が高い会社の共通点として、待遇のよさが挙げられます。労働にきちんと見合った給与をもらえ、福利厚生も充実しているような会社は従業員も長く在籍する傾向があります。給与は生活に直結するものであり、労働に見合わないと思われると、離職理由となりえるため注意が必要です。

また、従業員が長く居つく会社の多くは、公正公平な人事評価制度を採用しています。たとえば、上司や同僚など、さまざまな人物が多角的な評価を行う360度評価や定量評価などが該当します。

頑張りや成果を正しく評価してもらえないのは、従業員にとって悔しいことです。しかも、それがよくわからない評価制度に基づく仕打ちであれば、組織への不満は高まる一方でしょう。反対に、誰もが納得できる明確な基準を用いて評価を行っている会社であれば、上記のようなリスクを回避でき、従業員のモチベーションも向上させられます。

労働条件のよさも、従業員を定着させるうえで重要なポイントです。定着率の高い会社は、従業員になるべく負担がかからないような仕組みを構築しているケースが多く見受けられます。たとえば、ITツールの導入による業務効率化や、適材適所の人材配置などが挙げられます。

労働条件がよければ、従業員の心身にかかる負担が少なくなり、健康経営を推進できるのもメリットといえるでしょう。従業員のケガや病気を回避でき、生産性の向上にもつながります。

定着率が低い会社の共通点

定着率が低い会社の特徴として、将来性を感じられないことが挙げられます。入社したばかりの時期は、仕事を覚えるために一生懸命であるため、組織の将来まで頭が回りません。しかし、少し仕事に慣れてくると、周りからさまざまな情報が耳に入るようになり、将来に不安を感じる可能性があります。

たとえば、何年も働いている先輩の給料が、入社当時からほとんど変わっていない、といった話を耳にしたとしたらどうでしょう。多くの方は、「この会社にいても先がない」と考えるのではないでしょうか。

また、人材育成が不十分な会社も、従業員に将来の不安を抱かせてしまうおそれがあります。人材を育成しようとしない組織に未来などないことは、誰でも理解できます。入社したあとは放置したままで、成長の機会を与えようとしない、キャリアパスが描けないとなると、離職を考えてしまうのも不思議ではないでしょう。

労働環境や条件の悪さも、従業員の離職を招く原因となりえます。現代では、あらゆる情報を手軽に入手できます。自社の労働環境や条件が、ブラック企業のそれであると従業員が気づくのはそう遅くありません。また、単純に労働環境や条件が悪いと、心身に過度な負担がかかり、私生活にも影響を与えるおそれがあるため、離職される可能性があります。

社内の人間関係がよくない会社も、従業員の定着率がよくありません。業種や職種によっては、1日中黙々と作業に取り組むケースもありますが、それでも組織で働く以上ほかの従業員との関わりは必ず発生します。人間関係がよくないと、気持ちよく働けません。憂鬱な気持ちを抱いたまま業務に従事することとなり、モチベーションも低下する一方です。パワハラやモラハラが横行している会社なら、なおのこと職場を去りたいと考えるでしょう。

また、人間関係が特別悪くなくとも、すでに働いている人たちの輪に入れない、といったケースも少なくありません。このようなケースでは、疎外感を抱いてしまい、離職につながる可能性があります。社会に出たばかりの高卒人材ともなればなおさらです。


3.定着率を高める採用活動を行うためには?

1.採用前にできること

企業を良く知ってもらう機会を設ける

高卒人材が早期離職してしまう理由のひとつは、事前情報の少なさによるミスマッチです。そのため、離職を防ぎ組織に定着してもらうには、事前に自社のことをよく知ってもらわなければなりません。

具体的な方法としては、職場見学の実施が挙げられます。職場見学の実施は、ハローワークも推奨しているため、積極的におこないましょう。実際に職場を見てもらうことで、仕事の流れや雰囲気を知ってもらえます。職場見学時には、訪れている学生と年齢の近い従業員に担当させることをおすすめします。年齢の近い従業員が担当すれば、学生は安心して気軽に質問もできます。また、当日は全従業員に明るい挨拶を徹底させるなど、受け入れムードを作っておくことも大切です。

また、人材採用の専用サイトを活用するのもよいアイデアです。求人票に記載できる情報量は限定的ですが、採用サイトであればさまざまな情報を盛り込めます。求めている人物像や会社の魅力など、情報を充実させればミスマッチの回避につながります。さらに、採用パンフレットも活用しましょう。高卒採用では、求人票を持参したうえでの学校訪問が認められています。このとき、会社の魅力や特徴を伝えられる採用パンフレットも一緒に持参するのです。求人票を郵送するケースでも、同封しておけば目を通してもらえるでしょう。

採用パンフレットにも、採用サイトと同様に自社の魅力や強み、将来性などを盛り込むことをおすすめします。基本的には、「この会社で働きたい」と学生に思ってもらえる内容に仕上げます。具体的な仕事内容ややりがい、実際に働いている先輩の談話なども掲載するとよいでしょう。

欲しい人物像を明確にする

学校斡旋であれば学校訪問の際に先生に欲しい人物像をしっかりと伝えましょう。どの生徒か明確に伝えると、先生がこの生徒が向いているとイメージできます。

2.内定後~入社前にできること

内定を決まってから入社まで、高校生は社会人になる不安でいっぱいになります。直接の連絡は控えるように決められていますので、先生に相談をしながら生徒に手紙や連絡を渡してもらうなどのできることを探してみましょう。

3.入社後にできること

離職の要注意時期は1年目の春

先のグラフにもあったように大卒と高卒の離職率の差は1年目が大きいです。グラフは1年以内の離職割合で示したグラフです。特に注意するポイントは4月~6月です。

出典:『学卒就職者の離職状況調査結果(平成28年3月中学・高等学校卒業者』東京労働局データ

採用したら受入の覚悟を持って

高卒人材の多くは、社会へ出ることに緊張と不安を抱いています。入社式が間近に迫り、「行きたくない」と思ってしまう人もいるかもしれません。採用したのなら、きちんと受入の覚悟をもち、学生の気持ちを考えつつ受入の体制を整えましょう。社会に出たばかりの高卒人材は、社会人ばかりの職場になかなかなじめないかもしれません。その結果、離職となる可能性があるため、従業員間のコミュニケーションを活性化させる取り組みを積極的に進めましょう。

たとえば、従業員同士が交流できるイベント、飲み会の開催が考えられます。従業員同士のコミュニケーションが活性化し、円満な人間関係を構築できれば、定着率アップにつながります。また、従業員が相談しやすい環境を整えるのも、離職を防ぐために大切なポイントです。1対1で上司に相談できる機会を作る、相談専用窓口を設置する、などが有効と考えられます。労働環境の改善や働き方の整備を進めるのも大切です。負担軽減や業務効率化ができるITツールの導入や産休・育休制度の充実化などを進め、従業員が働きやすい環境構築に努めましょう。併せて、給与や昇給制度の見直しを図り、待遇を改善するのも有効です。

人材育成制度の充実や、キャリア構築支援の実施も定着率向上に効果が期待できます。将来に期待がもてない、先がないと思われてしまうと、離職を招きかねません。資格取得の費用を会社が負担する、定期的な面談を行い、ともにキャリアパスを描ける体制を整えるなど、従業員が未来に希望をもてる環境を構築しましょう。

4.定着率を高める取り組みをしている企業事例の紹介

採用後に定着をさせる取組にはどのようなものがあるでしょうか。
定着率の高い企業の取組み事例をヒントにご紹介します。

1.1年間の「育てる」フォロー サンキョー株式会社

産業別の3年間離職率で「58.0%」と高い水準なのが、「生活関連サービス業、娯楽業」。

しかし、アミューズメントを行うサンキョー株式会社では、1年目の社員に手厚いフォローを行い、高い定着率を誇っています。新入社員は全員1年間同じ店舗へ配属、OJTを行います。1人1人に合わせた指導や、面談を行い、「育てる人事」を心がけています。

職場近くに社員寮を完備し、同期での情報交換や切磋琢磨、絆を育てます。1~2歳上の身近な先輩社員が寄り添い、1年間サポートする「ブラザー・シスター制度」も取り入れ、丁寧にサポートをしています。

2.一から技術を身につける 有限会社嶋工業

外部研修を充実させた会社もあります。

2018年卒から高卒採用を始めた、建物外壁、ガラス張り部分の施工を行う有限会社嶋工業では、「職業訓練校」を導入しています。入社1年後、もしくは2年目に、LIXILなどが設立した建材技術専門学校「LIXILビル建材技術専門校」へ全額会社負担で入学できます。5~6月、10月~11月の期間で学科と実技のコースでみっちりと学ぶ時間を設け、これまでの職人の「見て学ぶ」だけではなく、一から技術を身につけることができるのです。

3.任せて育てる 株式会社ライフタイムサポート

規模別で最も高い水準の30名以下の企業ではどんなことができるでしょうか。

内装リフォームを行う、株式会社ライフタイムサポートでは、入社1年目の新人に、現場担当以外に、会社の重要なポジションである採用責任者を任せ、1年上の先輩がフォローしているそうです。その他に、「委員会制度」では、業務以外でコミュニケーションを取る機会を作るために、業務で接しないメンバー同士でイベントや行事の企画を行います。

会社にとって重要なポジションを任せていくことで、会社との距離を近づけることができるのかもしれません。

まとめ

高卒人材が離職する理由として多いのは、人間関係がよくない、労働時間や賃金などの条件がよくない、仕事が自分に合わないなどです。これらの理由による離職を回避するには、事前に十分な情報を提供すること、労働条件や待遇を見直すこと、コミュニケーション活性化の取り組みを行うことなどが大切です。

採用した人材を短期間で失うのは、企業にとって大きな損失です。時間やコストを費やして獲得した貴重な人材を失わぬよう適切な対処を行い、大切に戦力として育てていきましょう。

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