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外国人採用における介護人材の現状とメリット・デメリットとは?

2040年問題と介護現場の危機的状況

介護業界は今、かつてない人材危機に直面しています。団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となる2025年問題は現実のものとなり、全国の介護施設では「利用者はいるのに職員が足りず受け入れられない」「夜勤シフトが組めない」「訪問介護の新規利用を断らざるを得ない」といった深刻な事態が日常化しています。

厚生労働省の推計では、2026年度に約25万人、2040年度には約57万人の介護職員が不足するとされています。介護報酬改定で処遇改善が図られても、若年層の介護職離れは止まらず、有効求人倍率は全産業平均の3倍以上という状況が続いています。特別養護老人ホームの待機者は依然として多く、人材不足が介護難民を生み出す構造的な問題となっているのです。

こうした中、外国人介護人材の採用は「選択肢の一つ」から「事業継続のための必須戦略」へと位置づけが変わりつつあります。すでに全国で4万人以上の外国人が介護現場で働いており、特養、老健、グループホーム、デイサービス、訪問介護など、あらゆるサービス形態で外国人材が活躍しています。

しかし、「身体介護の質は保てるのか」「認知症ケアに対応できるのか」「夜勤を任せられるのか」「家族からの反発はないのか」といった現場特有の不安も根強くあります。本記事では、介護業界に特化した視点で外国人採用の実態を掘り下げ、現場が直面する課題と成功のポイントを具体的に解説します。

介護分野における外国人受け入れ制度の実務

在留資格「介護」 介護福祉士資格保有者

介護福祉士国家資格を持つ外国人に付与される在留資格で、介護業界では最も質の高い人材として位置づけられます。養成施設ルートまたは実務経験ルート(実務経験3年+実務者研修修了)で資格を取得します。

介護現場での強
・身体介護、生活援助、医療的ケアまで包括的に対応可能
・介護過程の展開やケアプラン理解など、専門知識を有する
・在留期間の更新制限がないため、リーダー候補として長期育成できる
・配偶者や子の帯同が可能で、生活基盤が安定しやすい

採用の実際
日本語能力はN2レベル以上が必要で、利用者・家族とのコミュニケーション、記録業務、カンファレンスへの参加なども比較的スムーズです。ユニットリーダーや介護主任として活躍している事例も増えており、施設にとっては中核人材として期待できます。

技能実習制度 3年間の実習を通じた育成

介護職種の技能実習は2017年に追加され、入国時にN4程度の日本語能力と介護導入講習の受講が必要です。1号(1年)、2号(2年)、3号(2年)と段階を経て、最長5年の実習が可能です。

介護現場での活用
・身体介護を中心に、食事・入浴・排泄介助などの基本的なケアを担当
・実習計画に基づき、段階的に技能を習得させる必要がある
・監理団体の巡回指導があり、技能実習指導員の配置が義務
・移乗介助や体位変換など、身体的負担の大きい業務で戦力となる

留意点
実習生は原則として転籍できないため、施設側は3〜5年の継続雇用を前提とした育成計画を立てる必要があります。介護技能実習評価試験の受験も必要で、不合格の場合は帰国となるため、計画的な学習支援が求められます。

特定技能「介護」 即戦力としての期待

2019年創設の特定技能制度では、介護分野は特定技能1号の対象です。技能実習2号修了者または介護技能評価試験・介護日本語評価試験・日本語能力試験(N4以上)に合格した者が対象となります。

介護現場での実態
・入浴・排泄・食事介助、移動支援、レクリエーション等を担当
・訪問介護では身体介護・生活援助の両方に従事可能
・夜勤対応も可能で、夜間の見守りや急変時の初期対応を任せられる
・通算5年の在留期間で、転職も認められているため定着支援が重要

受け入れ支援の義務
1号特定技能外国人支援計画の作成・実施が必須で、入国前ガイダンス、住居確保支援、生活オリエンテーション、日本語学習機会の提供、相談・苦情対応などが求められます。自施設で対応が困難な場合は、登録支援機関に委託することも可能です。

EPA(経済連携協定) 介護福祉士候補者の受け入れ

インドネシア、フィリピン、ベトナムの3カ国との協定に基づき、介護福祉士候補者として受け入れます。入国時にN3程度の日本語能力が必要で、母国で看護学校卒業または介護士資格を有することが条件です。

介護現場での位置づけ
・入国直後から就労可能で、身体介護全般を担当できる
・4年間の滞在中に介護福祉士国家試験の合格を目指す
・合格すれば在留資格「介護」へ変更し、長期就労が可能
・母国で医療・介護の基礎教育を受けており、専門性が高い

施設の支援体制
受け入れ施設には学習支援が義務付けられ、日本語教育だけでなく、国家試験対策も行う必要があります。就労時間内に週1〜2回の学習時間を確保したり、外部の受験対策講座に通わせたりする施設が多く、人的・経済的な投資が必要です。

介護現場における外国人材の受け入れ実態

施設種別ごとの受け入れ状況

特別養護老人ホーム(特養)
外国人材の受け入れが最も進んでいる施設種別です。ユニット型・従来型を問わず、身体介護を中心に活躍しています。3交代制や2交代制の夜勤シフトにも対応し、入浴・排泄介助などの重労働を担う貴重な戦力となっています。100床規模の施設で5〜10名の外国人材を雇用するケースが増えています。

介護老人保健施設(老健)
リハビリテーション中心の施設ですが、身体介護や生活支援でも外国人材が活躍しています。医療的ケアが多い老健では、日本語でのカルテ記録や医療用語の理解が課題となりますが、理学療法士や看護師との連携を図りながら業務を遂行しています。

グループホーム
認知症対応型共同生活介護では、利用者9名に対し職員1名という手厚い体制が求められます。少人数で家庭的な雰囲気のため、外国人材も利用者との信頼関係を築きやすく、認知症ケアの実践を学ぶ良い環境となっています。BPSD(行動・心理症状)への対応には日本語力と経験が必要ですが、丁寧な指導で対応可能です。

デイサービス・デイケア
通所系サービスでは、送迎、入浴介助、レクリエーション、機能訓練補助などで外国人材が活躍しています。利用者が日替わりで来所するため、多くの方とコミュニケーションを取る必要があり、日本語力の向上につながります。

訪問介護
特定技能外国人は訪問介護でも就労可能です。ただし、利用者宅での1対1のケアとなるため、高い日本語力とコミュニケーション能力、緊急時の判断力が求められます。そのため、まず施設での経験を積んでから訪問介護に配置する事業所が多い傾向です。

業務範囲と配置の実際

外国人介護職員の業務範囲は、在留資格や日本語能力、経験年数によって段階的に拡大していくのが一般的です。

入職初期(1〜6ヶ月)
・環境整備、配膳・下膳、リネン交換
・食事介助の見守り、水分補給
・移動介助の補助、車椅子介助
・レクリエーション活動の補助
・簡単な記録業務(チェック形式)

中期(6ヶ月〜2年)
・入浴介助(2人介助で実施)
・排泄介助(オムツ交換、トイレ誘導)
・食事介助(全介助含む)
・移乗介助(リフト使用含む)
・夜勤業務(先輩職員とペアで)
・ケース記録の作成

後期(2年以降)
・一人での夜勤対応
・新人教育の補助
・カンファレンスへの参加
・モニタリング業務
・緊急時の初期対応
・ユニットリーダー補佐

介護記録と情報共有における課題

介護現場では、介護記録ソフト、申し送りノート、ケアプラン、連絡帳など、多様な記録・情報共有ツールを使用します。外国人材にとって、漢字や専門用語が多い記録業務は大きな負担となります。

多くの施設では、記録テンプレートの整備、よく使う表現の定型文化、音声入力の活用、タブレット端末での選択式記録など、外国人材でも記録しやすい工夫を導入しています。これらの改善は、日本人職員の業務効率化にもつながっています。

外国人採用がもたらす介護現場のメリット

メリット1 深刻な人手不足への対応と事業継続

介護業界の有効求人倍率は常に高水準で推移し、特に地方では求人を出しても応募がない状況が続いています。外国人材の採用により、必要な人員配置基準を満たし、新規利用者の受け入れ継続、ショートステイの稼働率向上、夜勤シフトの安定化など、事業運営の基盤を確保できます。

実際に、外国人材を受け入れたことで、待機者への入所案内が可能になった特養、夜勤専従職員の過重負担が解消された老健、土日祝日の営業継続が実現したデイサービスなど、具体的な経営改善効果が報告されています。

メリット2 身体介護における貴重な若手戦力

介護職員の高齢化が進む中、20〜30代の外国人材は身体的な負担が大きい業務で重要な戦力となります。入浴介助での浴槽への出入り介助、ベッドからの移乗介助、体位変換、夜勤での巡回業務など、体力を要する場面で活躍します。

腰痛などで身体介護が困難になった50代以上の日本人職員が、相談業務や事務業務にシフトし、身体介護を若い外国人材が担うという役割分担により、職員全体の働きやすさが向上している施設もあります。

メリット3 夜勤帯の人員確保と質の向上

夜勤勤務者の確保は多くの施設で最重要課題です。外国人材の多くは夜勤勤務に前向きで、夜勤手当による収入増を歓迎する傾向があります。特定技能や在留資格「介護」では、経験を積めば一人夜勤も可能となり、夜勤シフトの安定化に大きく貢献します。

夜間の定期巡回、体位変換、排泄介助、急変時の対応など、責任ある業務を任せられる外国人材の存在は、施設運営において非常に重要です。

メリット4 認知症ケアにおける新たな視点

当初は「外国人材に認知症ケアは難しいのでは」という懸念がありましたが、実際には利用者との良好な関係を築いている事例が多数報告されています。外国人材の明るい性格や笑顔、ゆっくりとした丁寧な対応が、認知症の方の安心感につながるケースが見られます。

また、外国人材が母国の歌を歌う、簡単な言葉を教える、民族衣装を着るといった活動が、利用者の脳への刺激となり、回想法的な効果をもたらすこともあります。

メリット5 介護技術の標準化と教育体制の強化

外国人材に介護技術を教えるためには、これまで「見て覚える」「背中を見て学ぶ」だった技術を言語化し、手順を明確にする必要があります。この過程で、ボディメカニクスの原理、移乗介助の手順、オムツ交換の方法、入浴介助の安全確認ポイントなどが体系的に整理されます。

結果として、OJT体制が強化され、新人教育の質が向上し、介護技術が標準化されるという副次的効果が生まれます。「外国人スタッフに教えるためにマニュアルを作ったら、日本人の新人教育もやりやすくなった」という声は多くの施設で聞かれます。

メリット6 利用者や家族の国際理解の促進

外国人職員との交流は、利用者にとって日常生活の刺激となります。特に、地方の施設で外国人と接する機会がなかった高齢者にとって、新鮮な体験となり、認知機能の維持や生活の質向上につながります。

家族の中にも、当初は不安を示していたものの、外国人職員の真摯な対応を目の当たりにして信頼を寄せるようになったという事例が数多くあります。グローバル化する社会において、介護現場が多様性を受け入れる先進的な場となっています。

介護現場で直面する具体的なデメリットと課題

デメリット1 介護用語と方言の理解困難

介護現場では「清拭」「更衣」「臥床」「離床」「傾眠」など、日常会話では使わない専門用語が頻出します。さらに「嚥下」「誤嚥」「拘縮」「褥瘡」といった医療に近い用語も多く、漢字の読み書きを含めて習得には時間がかかります。

また、利用者が話す方言や昔の言い回しの理解も困難です。「〇〇だべ」「〇〇やけん」といった地域の方言、「便所」「雪隠」などの古い表現、「足がしびた」などの方言的な言い回しを理解できず、コミュニケーションに支障が出ることがあります。

デメリット2 緊急時対応とリスクマネジメント

転倒・転落、誤嚥、急変など、介護現場では緊急事態が発生します。このような場面では、瞬時の判断と適切な対応、看護師や医師への正確な報告が求められます。言語の壁があると、初期対応の遅れや情報伝達の不正確さが生じるリスクがあります。

特に夜間帯で看護師が不在の状況での急変対応、救急搬送時の状況説明などは、高度な日本語力が必要となるため、一人夜勤を任せるまでには十分な期間と訓練が必要です。

デメリット3 利用者・家族からの抵抗感

高齢の利用者の中には、外国人に対する偏見や不安を持つ方もいます。「日本語が通じないのでは」「文化が違うから介護してほしくない」といった声が上がることもあり、施設側は丁寧な説明と理解促進が必要です。

家族からも、「親のケアを外国人に任せて大丈夫か」「意思疎通できるのか」といった懸念が示されることがあります。特に、認知症の方の家族や、看取り期の家族は不安を強く感じる傾向があります。

デメリット4 介護記録と報告業務の負担

介護記録は法的にも重要な書類であり、正確な記載が求められます。「食事摂取量7割」「傾眠傾向あり」「下痢便あり」といった記録、ケアプランの短期目標・長期目標の理解、モニタリング記録の作成など、文章作成能力が必要な業務は外国人材にとって大きな負担です。

申し送りでの口頭報告も、要点を簡潔に伝える日本語力が求められ、慣れるまでには時間がかかります。

デメリット5 指導担当職員の負担増加

外国人材の受け入れ初期は、指導担当者の負担が大幅に増加します。通常業務に加えて、ゆっくり話す、わかりやすい言葉で説明する、実技を繰り返し見せる、記録の添削をするなど、時間と労力が必要です。

特に、人員ギリギリで運営している施設では、指導時間の確保自体が困難で、指導担当者が疲弊してしまうケースもあります。また、指導方法についての研修を受けていない職員が担当すると、「なぜできないのか」とストレスを感じることもあります。

デメリット6 配置基準への算定制約(過渡期の課題)

技能実習生は、入国後6ヶ月間は介護福祉士・実務者研修修了者等と同等とはみなされず、人員配置基準の算定に一定の制約があります。また、訪問介護では、当初は同行訪問による研修期間が必要で、すぐに一人での訪問はできません。

事業所としては、人員として雇用しながらも、配置基準上すぐにはカウントできない期間があることを想定し、人員計画を立てる必要があります。

デメリット7 採用・受け入れコストの現実

技能実習制度では、監理団体への加入費(年間数十万円)、実習生1人あたりの受け入れ費用(初年度50〜100万円程度)、住居費、生活支援費などがかかります。特定技能でも、登録支援機関への委託費(月2〜3万円/人)、採用費用(30〜50万円/人)などが必要です。

EPAでは受け入れ費用は比較的抑えられますが、日本語学習支援や国家試験対策の費用・時間が必要です。在留資格「介護」での直接採用も、人材紹介会社を利用すれば成功報酬が発生します。

これらのコストは、国内での正職員採用と比較して決して安くはなく、長期的な投資として捉える必要があります。

デメリット8 定着率の課題と離職リスク

特定技能外国人は転職が可能なため、より条件の良い施設に移ってしまうリスクがあります。都市部の高時給施設や、住環境の良い施設、同国出身者が多い施設などに引き抜かれるケースも報告されています。

また、家族の病気や経済状況の変化、母国での事情により、予期せず帰国せざるを得ない場合もあります。せっかく時間とコストをかけて育成した人材が短期間で離職すると、施設の損失は大きくなります。

介護現場で外国人採用を成功させる実践的ポイント

ポイント1 受け入れ前の現場職員研修と意識改革

外国人材の受け入れ成功の最大の鍵は、現場職員の理解と協力です。受け入れ前に、以下のような研修を実施しましょう。

・外国人材を受け入れる意義と目的の共有
・異文化理解とコミュニケーション方法の研修
・宗教的配慮(ムスリムの場合の礼拝、食事制限など)の理解
・「やさしい日本語」の使い方講習
・指導方法とOJT計画の作成ワークショップ

経営層だけが前のめりになり、現場が置いてきぼりになると、受け入れは失敗します。現場の不安や懸念に耳を傾け、十分な準備期間を設けることが重要です。

ポイント2 介護技術の可視化とマニュアル整備

外国人材に技術を教えるには、これまで「阿吽の呼吸」で行っていた介護技術を可視化する必要があります。

・移乗介助の手順(写真付き)
・オムツ交換の方法(イラスト付き)
・入浴介助の安全確認ポイント
・食事介助の姿勢と声かけ
・緊急時対応フローチャート
・介護記録の記入例とテンプレート

これらを整備する過程で、施設全体の介護の質が向上します。また、動画マニュアルの作成も効果的で、外国人材が自宅で復習できる環境を整えましょう。

ポイント3 段階的なOJTプログラムの構築

入職後の育成は、段階的に業務範囲を拡大していくことが重要です。介護現場では、以下のようなステップが推奨されます。

第1段階(1〜3ヶ月):基本業務の習得
・環境整備、リネン交換
・配膳・下膳、水分補給
・移動介助の補助
・簡単なレクリエーション補助
・記録の見方、用語の理解

第2段階(3〜6ヶ月):身体介護の実践
・食事介助(見守り→全介助)
・排泄介助(トイレ誘導→オムツ交換)
・介助(2人介助での実施)
・日勤帯での一連の業務
・簡単な記録作成

第3段階(6ヶ月〜1年):夜勤業務への参加
・先輩職員とのペア夜勤
・夜間の巡回、体位変換
・緊急時対応の訓練
・詳細な記録作成
・カンファレンスへの参加

第4段階(1年〜2年):独り立ちと後輩指
・一人夜勤の実施
・新人教育の補助
・委員会活動への参加
・ユニットリーダー補佐

各段階でチェックリストを用い、到達度を確認しながら進めることで、外国人材も施設も安心して成長できます。

ポイント4 介護記録業務の支援体制

記録業務の負担を軽減するため、以下のような工夫が有効です。

・介護記録ソフトの選択肢選択機能の活用
・よく使う表現の定型文リストの作成
・音声入力機能の導入
・タブレット端末での写真記録
・記録添削と指導の時間確保
・漢字にルビを振った記録用紙

また、「記録は完璧でなくていい。要点が伝われば良い」という文化を作ることも大切です。日本人職員も記録に多くの時間を取られている現状を踏まえ、記録業務全体の見直しにつなげましょう。

ポイント5 日本語学習の継続的支援

入職後も継続的な日本語学習支援が定着の鍵です。介護現場に特化した支援としては、以下が効果的です。

・週1〜2回の業務時間内学習時間の確保
・介護の日本語テキストの提供
・介護福祉士国家試験過去問題の学習支援
・外部の日本語教室への通学費用補助
・eラーニングシステムの導入
・日常的な言葉の意味を教え合う文化づくり

特に、介護福祉士資格取得を目指す外国人材には、受験対策講座への参加支援、模擬試験の実施、学習時間の確保など、具体的なサポートが重要です。

ポイント6 メンター制度と相談体制の確立

外国人材一人ひとりに担当メンターを配置し、業務・生活・精神面でのサポート体制を作ります。介護現場でのメンターの役割は以下の通りです。

・日々の業務指導とフィードバック
・利用者・家族対応の助言
・介護技術の実技指導
・記録作成の添削
・悩みや不安の相談対応
・生活面でのサポート(買い物、役所手続きなど)
・キャリアプランの相談

月1回程度の定期面談を実施し、目標設定と振り返りを行うことで、成長を実感でき、モチベーション維持につながります。

ポイント7 利用者・家族への丁寧な説明と理解促進

外国人材の受け入れにあたっては、利用者や家族への事前説明が重要です。以下のような取り組みが効果的です。

・国人職員受け入れの説明会開催
・外国人職員のプロフィール紹介(顔写真、経歴、日本語能力など)
・家族への文書での事前通知
・外国人職員と利用者の顔合わせ機会の設定
・母国文化紹介イベントの実施
・広報誌やホームページでの活動紹介

初めは不安を示していた家族も、外国人職員の真摯な介護姿勢を見て信頼を寄せるようになるケースが多くあります。透明性を持って情報を開示し、コミュニケーションを密に取ることが信頼構築の基本です。

ポイント8 夜勤体制への段階的な移行計画

夜勤は介護現場で最も責任が重い業務です。外国人材を夜勤に配置する際は、以下の段階を踏みましょう。

段階1:夜勤シャドーイング(3〜6ヶ月目)
先輩職員の夜勤に同行し、業務の流れを理解します。巡回、体位変換、排泄介助、記録作成など、一連の流れを学びます。

段階2:ペア夜勤(6〜12ヶ月目)
経験豊富な職員とペアで夜勤に入り、徐々に主体的に業務を行います。緊急時対応のシミュレーション訓練も実施します。

段階3:一人夜勤の開始(1年以降)
緊急連絡体制を確認した上で、一人夜勤を開始します。初めての一人夜勤後は、必ずフィードバック面談を行います。

夜勤中の緊急時には、オンコール看護師や管理者への連絡手順を明確にし、電話での報告マニュアルを用意しておくことが安心につながります。

ポイント9 キャリアパスと処遇の明確化

外国人材にとって、日本でのキャリアの見通しが立つことは、定着に直結します。介護現場でのキャリアパスとして、以下を明示しましょう。

技能レベルに応じた給与体系
・入職時:基本給+夜勤手当
・介護福祉士資格取得:資格手当(月1〜3万円)
・ユニットリーダー:役職手当
・介護主任・副主任:管理職手当

資格取得支援
・介護職員初任者研修の受講支援
・実務者研修の受講費用補助
・介護福祉士国家試験対策講座への参加支援
・受験費用の全額補助
・学習時間の確保(週3〜5時間)

長期就労インセンティブ
・3年勤続表彰と報奨金
・5年勤続での永住権申請サポート
・家族帯同の支援(住居確保、子どもの教育)

明確なキャリアパスを示すことで、「この施設で長く働きたい」というモチベーションが高まります。

ポイント10 同国出身者コミュニティとの連携

複数の外国人材を受け入れている場合、同国出身者同士のコミュニティが相互支援につながります。また、地域の外国人コミュニティとの連携も有効です。

・施設内での同国出身者の交流機会
・地域の外国人コミュニティイベントへの参加支援
・母国の祝日や文化行事の尊重
・母国料理を施設の食事に取り入れる企画
・帰国時の柔軟な休暇対応

孤立感を防ぎ、精神的な安定を図ることが、長期定着の基盤となります。

まとめ

外国人採用は介護の未来を拓く戦略的選択

介護業界における外国人採用は、もはや一時的な対応策ではなく、持続可能な介護サービスを提供するための戦略的な必須選択肢となっています。2025年以降も加速する高齢化社会において、外国人介護人材は日本の介護を支える重要な存在です。

身体介護の担い手として、夜勤要員として、認知症ケアの実践者として、多くの外国人材がすでに全国の介護現場で活躍しています。真面目で意欲的な若い人材が、利用者に寄り添い、質の高いケアを提供している実例は、全国で数多く報告されています。

一方で、言語の壁、記録業務の負担、緊急時対応の課題、受け入れコスト、指導担当者の負担など、解決すべき課題があることも事実です。しかし、これらの課題は、適切な準備と継続的な支援体制によって十分に克服可能です。

重要なのは、外国人採用を「安い労働力の確保」と考えるのではなく、「施設の未来を共に創る仲間を迎える」という姿勢で臨むことです。そのためには、経営層のコミットメント、現場職員の理解と協力、十分な受け入れ体制の整備、継続的な育成支援が欠かせません。

介護技術の標準化、教育体制の強化、業務マニュアルの整備など、外国人材受け入れのために行った改善は、施設全体の質向上につながります。多様性を受け入れることで、組織は成長し、利用者にもより豊かなサービスを提供できるようになります。

これから外国人採用を検討する介護事業者の皆様には、まず自施設の状況とニーズを明確にし、適切な受け入れ制度を選択することから始めていただきたいと思います。先行事例を学び、監理団体や登録支援機関と連携しながら、無理のない範囲で段階的に受け入れを進めることが成功への道です。

外国人介護人材との協働は、日本の介護の質を維持・向上させながら、多様性に富んだ持続可能な介護サービスを実現するための、大きな一歩となるはずです。現場の知恵と工夫を積み重ね、外国人材と日本人職員が共に成長し、利用者に最高のケアを提供できる職場環境を、共に築いていきましょう。

介護は人と人との関わりの仕事です。国籍を超えて、利用者の尊厳と生活の質を守るという同じ目標に向かって協働することで、日本の介護の未来は明るく開けていくでしょう。

本記事では、介護業界での外国人採用のメリットとデメリットをまとめました。介護業界が直面している課題に対して、どのようにアプローチしたら良いのかを考えるきっかけになれば幸いでございます。

外国人採用に関して、もっと知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。

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