建設業における外国人採用の現状と特徴について

建設現場で外国人労働者を目にする機会が増えていませんか?
人手不足が深刻化する建設業界では、外国人採用が重要な選択肢となっています。
しかし、建設業特有の在留資格や安全管理の問題など、注意すべき点も多く存在します。
本記事では、‟建設業における外国人採用の基礎知識から実際の採用プロセスまで”、現場で役立つ情報を詳しく解説します。
建設業における外国人採用の現状と背景
建設業界の深刻な人手不足

引用元:4. 建設労働 | 建設業の現状 | 日本建設業連合会
建設業界は今、かつてない人手不足に直面しています。国土交通省の調査によると、建設業就業者数は1997年のピーク時には685万人でしたが、2024年には約480万人まで減少しています。
特に55歳以上が全体の約36%を占める一方で、29歳以下は約11%にとどまり、高齢化が急速に進んでいます。
さらに2024年4月からは時間外労働の上限規制が建設業にも適用され、いわゆる「2024年問題」により、これまで以上に効率的な人材確保が求められています。
外国人労働者数の推移

こうした状況の中、建設業における外国人労働者は年々増加しています。
厚生労働省の「外国人雇用状況」の届出状況によると、
建設業で働く外国人労働者数は令和6年10月末時点で約17万人を超え、前年比で約3万人増加しています。
特に注目すべきは、2019年4月に創設された「特定技能」制度です。この制度により、建設業では即戦力となる外国人材の受け入れが可能になり、多くの企業が活用を始めています。
建設業特有の課題
建設業における外国人採用には、他の業種にはない特有の課題も存在します。
①安全管理の重要性
建設現場は高所作業や重機の操作など、常に危険と隣り合わせです。言語や文化の違いから、安全指示が正確に伝わらなければ、重大な事故につながる可能性があります。
②建設業では多くの職種で技能や資格が必要。
外国人労働者にもこれらの技能習得や資格取得を支援する体制が求められます。
③関係する企業間での調整や理解が必要。
建設現場は複数の企業が協力して作業を進める場合が多く、元請け・下請けといった重層的な構造になっています。このため、外国人労働者の受け入れについても、関係する企業間での調整や理解が必要となります。
外国人労働者を雇用するための在留資格
建設業で活用できる主な在留資格
建設業で外国人を雇用する場合、適切な在留資格を持っているか確認することが最も重要です。
建設業で活用できる主な在留資格は以下の通りです。
【特定技能1号(建設)】
2019年4月に創設された在留資格で、建設業にとって最も重要な制度です。一定の技能を持つ外国人が、建設分野の特定の業務に従事できます。在留期間は通算5年で、家族の帯同は認められていません。
特定技能1号で就労可能な建設分野の業務区分は以下の18種類です。
①型枠施工 ②左官 ③コンクリート圧送 ④トンネル推進工 ⑤建設機械施工 ⑥土工 ⑦屋根ふき ⑧電気通信 ⑨鉄筋施工 ⑩鉄筋継手 ⑪内装仕上げ/表装 ⑫とび ⑬建築大工 ⑭配管 ⑮建築板金 ⑯保温保冷 ⑰吹付ウレタン断熱 ⑱海洋土木工
【技能実習】
技能実習制度は、開発途上国への技能移転を目的とした制度です。建設業では多くの職種で技能実習生を受け入れることができます。最長5年間の実習が可能で、技能実習2号から特定技能1号への移行も可能です。
ただし、技能実習は「実習」であり「労働」ではないという建前があるため、受け入れには監理団体を通じた適切な管理が必要です。
【技術・人文知識・国際業務】
いわゆる「技人国」と呼ばれる在留資格です。建設業では、設計やCADオペレーター、施工管理、海外取引業務などの職種で活用できます。大卒または専門学校卒以上の学歴、もしくは実務経験10年以上が必要です。
【身分に基づく在留資格】
以下の在留資格を持つ外国人は、就労に制限がありません。
・永住者
・日本人の配偶者等
・永住者の配偶者等
・定住者
これらの在留資格を持つ外国人は、どのような職種でも自由に働くことができるため、建設業でも貴重な人材となります。
建設業での特定技能制度について
建設業における外国人採用で最も重要な「特定技能」制度について、さらに詳しく説明します。
【受け入れ要件】
特定技能外国人を建設業で受け入れるには、以下の要件を満たす必要があります。
- 建設業許可を受けていること
- 建設キャリアアップシステム(CCUS)に登録していること
- 一般社団法人建設技能人材機構(JAC)の正会員であること
- 適切な報酬額を支払うこと(日本人と同等以上)
- 国土交通大臣が告示で定める基準に適合すること
これらの要件を満たさなければ、特定技能外国人を雇用することはできません。
特にCCUSとJACへの登録は建設業特有の要件ですので、事前に準備しておく必要があります。
建設キャリアアップシステム(CCUS)とは
CCUSは、建設技能者の資格や現場での就業履歴を登録し、技能の公正な評価や適切な処遇につなげるためのシステムです。特定技能外国人を受け入れる企業は、事業者登録と技能者登録の両方が必要です。
建設技能人材機構(JAC)とは
JACは、建設業における特定技能外国人の適正な受け入れと就労を支援するため、2019年4月に設立された組織です。正会員になることで、特定技能外国人の受け入れが可能になります。年会費は事業者の規模によって異なります。
在留資格確認の重要性とリスク
外国人を採用する際は、必ず在留カードで以下の項目を確認しましょう。
【採用時のチェック項目】
✅在留カードが有効期限内であること
✅在留資格の種類が業務内容と一致していること
✅就労制限の有無(裏面に記載)
✅偽造カードでないこと
在留カードの真偽は、出入国在留管理庁のウェブサイトで照会することができます。
偽造カードを見抜けずに採用してしまうと、雇用主にも罰則が科されるため、必ず確認を行いましょう。
【有効期限切れの外国人を雇用した場合】
対象の外国人⇒「1年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金、またはその両方」、
雇用主⇒「3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金、またはその両方」が科される可能性があります。
外国人採用の魅力
人手不足の即効的な解消
建設業における外国人採用の最大の魅力は、深刻な人手不足を解消できることです。
特に特定技能制度では、すでに一定の技能を持った人材を採用できるため、即戦力として現場に配置することが可能です。日本人の若手採用が難しい中、外国人労働者は貴重な戦力となります。募集してもなかなか応募がない職種でも、外国人採用の選択肢を加えることで、応募者の母数を大きく広げることができます。
つまり、“新しい採用チャネル”を増やすことで、会社の“根本的な人材不足の課題を解消”することが可能になります。
助成金の活用
外国人労働者を雇用する場合、各種助成金を活用できる可能性があります。
人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)
外国人労働者の職場定着を促進するため、就労環境の整備を行う事業主に対して助成されます。
通訳の配置や翻訳機器の導入、マニュアルの多言語化などの取り組みが対象となります。
キャリアアップ助成金
外国人労働者を正社員化する場合や、処遇改善を行う場合に活用できます。
これらの助成金を活用することで、受け入れ体制の整備にかかるコストを軽減することができます。詳細は最寄りのハローワークや労働局に確認しましょう。
グローバル展開への布石
将来的に海外展開を考えている建設企業にとって、外国人労働者の雇用は貴重な経験となります。
異なる文化や価値観を持つ人材と協働することで、組織全体のグローバル対応力が向上します。
また、母国に帰国した元従業員が、現地でのビジネスパートナーとなる可能性もあります。
外国人労働者の採用プロセス
募集方法の選択
建設業で外国人労働者を採用する方法は、いくつかあります。
自社の状況に合わせて適切な方法を選びましょう。
・人材紹介会社の活用
・監理団体を通じた技能実習生の受
・求人サイトの活用
・リファラル採用(紹介)
【人材紹介会社の活用】
最も確実な方法は、建設業に特化した外国人材の紹介会社を利用することです。在留資格の確認から入社までのサポートを受けられるため、初めて外国人を採用する企業にはおすすめです。
紹介会社は特定技能外国人の紹介だけでなく、技能実習生の受け入れ支援、在留資格の変更手続きなど、幅広いサービスを提供しています。
【監理団体を通じた技能実習生の受け入れ】
技能実習生を受け入れる場合は、監理団体を通じて行うのが一般的です。監理団体は、技能実習生の選抜から受け入れ後の監理まで、包括的なサポートを提供します。
建設業に実績のある監理団体を選ぶことが重要です。
団体によってサポート内容や費用が異なるため、複数の団体を比較検討しましょう。
【求人サイトの活用】
すでに日本に在住し、身分に基づく在留資格を持つ外国人であれば、通常の求人サイトでも募集できます。永住者や日本人の配偶者などは就労制限がないため、日本人と同様に採用活動を行えます。
【リファラル採用(紹介)】
既に外国人労働者を雇用している場合、その従業員からの紹介で新たな人材を採用する方法も効果的です。同郷のネットワークを活用することで、信頼できる人材を確保できる可能性があります。
選考時の確認事項
外国人労働者の選考では、日本人採用とは異なる視点での確認が必要です。
【在留資格と業務内容の適合性】
最も重要なのは、応募者の在留資格で従事予定の業務が認められているかの確認です。特定技能の場合、18の業務区分のうちどれに該当するかを明確にしましょう。
【日本語能力の確認 】
建設現場では、安全確保のため日本語でのコミュニケーションが不可欠です。
以下のレベルを確認しましょう。
・日本語を聞いて理解できるか
・日本語で会話ができるか
・日本語の読み書きができるか(ひらがな、カタカナ、基本的な漢字)
日本語能力試験(JLPT)のN4レベル以上が目安となります。ただし、試験に合格していても実際の会話能力は個人差があるため、面接で直接確認することが重要です。
【技能レベルの確認】
特定技能の場合、一定の技能があることが前提ですが、実際のレベルは個人によって異なります。
可能であれば実技テストを行うか、これまでの経験や取得している資格を確認しましょう。
【健康状態の確認】
建設現場は体力を必要とする仕事が多いため、健康状態の確認も重要です。持病の有無や、日本での医療保険加入予定なども確認しておきましょう。
【文化・価値観の確認】
宗教上の理由で特定の時間に祈る必要がある、食事に制限がある、など文化的な配慮が必要な場合もあります。事前に確認し、対応可能かを判断しましょう。
雇用契約の締結
外国人労働者との雇用契約では、日本人以上に丁寧な説明と、明確な契約書の作成が重要です。
【契約書の言語】
可能な限り、日本語と母国語の両方で契約書を作成しましょう。少なくとも重要な部分(給与、労働時間、休日、業務内容など)は母国語の説明を用意することが望ましいです。
【記載すべき内容】
雇用契約書には、以下の内容を明記しましょう。
①業務内容の詳細
②就業場所
③労働時間、休憩時間、休日
④賃金の額と計算方法、支払い方法
⑤退職に関する事項
⑥社会保険の加入
⑦安全衛生に関する事項
特に建設業では、現場が変わることや、残業の可能性なども明確に記載しておくことが重要です。
【報酬の設定】
外国人労働者の報酬は、同等の業務を行う日本人と同等以上でなければなりません。国籍による差別的な取り扱いは法律で禁止されています。
特定技能外国人の場合、建設業では日本人と同等の報酬体系を適用することが要件となっています。
必要な手続き
外国人労働者を採用する際は、複数の手続きが必要です。
【在留資格の取得・変更】
新たに在留資格を取得する場合や、別の在留資格から変更する場合は、地方出入国在留管理局での手続きが必要です。処理には2週間から1カ月程度かかるため、入社予定日を考慮して早めに申請しましょう。
【ハローワークへの届出】
外国人を雇用した場合、ハローワークに「外国人雇用状況届出書」を提出する必要があります。雇用保険の被保険者となる場合は雇用保険被保険者資格取得届、それ以外の場合は外国人雇用状況届出書を提出します。
届出を怠ると30万円以下の罰金が科される可能性があるため、必ず期限内に提出しましょう。
【建設キャリアアップシステムへの登録】
特定技能外国人を受け入れる場合は、CCUSへの技能者登録が必要です。入社前または入社後速やかに登録手続きを行いましょう。
【その他の手続き】
・社会保険(健康保険、厚生年金保険)の加入手続き
・労働保険の加入手続き
・住民税の手続き
これらの手続きは日本人と同様ですが、外国人労働者には制度の説明を丁寧に行う必要があります。
まとめ
建設業界の人手不足は、いち企業だけでは解決できない構造的な課題です。
外国人労働者の受け入れは、その解決策の1つとして大きな可能性を秘めています。
ただし、外国人採用は単なる労働力の確保ではありません。異なる文化や価値観を持つ人々との協働を通じて、組織全体が成長する機会でもあります。言語や文化の違いから、最初は戸惑うこともあるでしょう。しかし、適切な準備と継続的なサポートにより、外国人労働者は貴重な戦力となり、企業の発展に貢献してくれます。
より実践的な外国人採用を知りたい方は、下記の関連記事をご覧ください。
関連記事:外国人採用の注意点とは?在留資格・手続きなどを徹底解説
また、他の方法で人材不足を解消したい方には、前述でも紹介したように高卒採用がおすすめです。
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本記事が、皆様の外国人採用の第一歩となれば幸いです。
人材不足という課題を、多様性という強みに変えていきましょう!
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