建設業における外国人労働者の受け入れ実践ガイド

外国人労働者の受け入れ後のサポート
入社時のオリエンテーション
外国人労働者が入社したら、まず丁寧なオリエンテーションを実施しましょう。この最初の段階での対応が、その後の定着率を大きく左右します。
会社のルール説明
日本の建設現場では当たり前とされていることも、外国人にとっては初めて知ることかもしれません。以下のような基本的なルールを、具体的な例を示しながら説明しましょう。
【始業時刻の厳守(日本では時間厳守が重視されること)】
始業時刻の厳守については、日本では時間厳守が非常に重視されることを説明します。
5分前行動の習慣や、遅刻しそうな場合の連絡方法なども具体的に伝えましょう。
【報告・連絡・相談の重要性】
報告・連絡・相談の重要性については、どのような状況で誰に報告すべきか、具体例を挙げて説明します。
【安全第一の原則】
安全第一の原則は、建設現場で最も重要なルールです。「危険だと思ったら作業を止める」「わからないことは必ず確認する」といった基本姿勢を、繰り返し伝えましょう。
【整理整頓の習慣】
整理整頓の習慣については、工具の定位置管理や、作業後の清掃の重要性を説明します。
【服装や身だしなみのルール】
服装や身だしなみのルールも重要です。作業服の着用方法、安全靴の選び方、ヘルメットの正しいかぶり方など、細かい点まで指導しましょう。
日本での生活サポート
仕事だけでなく、日本での生活についても包括的なサポートが必要です。
【銀行口座の開設方法と住民登録の手続き】
銀行口座の開設方法については、必要書類の準備から、実際の手続きまで同行してサポートすることが望ましいでしょう。住民登録の手続きも、市役所への同行や書類作成の支援を行います。
【ゴミの分別方法と公共交通機関の利用方法】
ゴミの分別方法は、外国人にとって特に理解が難しい日本のルールの一つです。イラスト付きの分別表を用意し、実際のゴミ出しの日に立ち会って指導すると効果的です。公共交通機関の利用方法では、定期券の購入方法や、ICカードの使い方を教えましょう。
【緊急時の連絡先(警察、消防、病院)】
緊急時の連絡先として、警察(110番)、消防・救急(119番)、会社の緊急連絡先を明記したカードを配布します。母国語での相談ができる窓口があれば、その情報も提供しましょう。
特に技能実習や特定技能で来日したばかりの外国人は、日本での生活が初めてです。携帯電話の契約、病院の受診方法、日用品の購入場所など、生活全般にわたる丁寧なサポートが定着率の向上につながります。
安全教育の徹底
建設現場における安全教育は、外国人労働者にとって最も重要な教育です。命に関わる内容だけに、確実な理解が求められます。
多言語対応の安全マニュアル
安全マニュアルは、できる限り母国語版を用意しましょう。ベトナム語、中国語、タガログ語など、主要な言語でのマニュアル作成を検討します。イラストや写真を多用し、視覚的に理解できるものが効果的です。
また、文字だけでなく、動画教材の活用も有効です。実際の作業風景や、危険な状況を映像で示すことで、より深い理解につながります。
実地での安全指導
マニュアルだけでなく、実際の現場で具体的に指導することが重要です。危険な箇所や作業手順を、実物を見せながら説明しましょう。
高所作業の安全帯の使い方、重機の周辺での注意点、電動工具の取り扱い方など、実演を交えて指導します。一度説明しただけでは不十分です。繰り返し確認し、理解度をチェックしながら進めましょう。
定期的な安全ミーティング
毎日の朝礼や定期的な安全ミーティングで、繰り返し安全の重要性を伝えましょう。外国人労働者の理解度を確認しながら進めることが大切です。
簡単な日本語で話す、ゆっくり話す、重要な点は繰り返すなど、外国人にも理解しやすいコミュニケーションを心がけます。外国人労働者自身にも発言の機会を与え、疑問点があれば気軽に質問できる雰囲気を作りましょう。
安全標識の多言語化
現場の安全標識を多言語化することも検討しましょう。特に「立入禁止」「高所作業中」「重機作業中」「感電注意」など、重要な標識は外国人労働者の母国語でも表示すると効果的です。
色や形状による識別も活用します。赤は禁止、黄色は注意、青は指示といった、国際的に共通する色の意味を活用することで、言語を超えた理解を促進できます。
技能教育とキャリア支援
外国人労働者のモチベーション維持には、技能向上の機会を提供することが重要です。
段階的な技能教育
基本的な作業から始めて、徐々に高度な技能を習得できるよう、計画的に教育を行いましょう。最初の数ヶ月は先輩作業員に付いて基本を学び、その後、徐々に独立した作業を任せていきます。
建設キャリアアップシステム(CCUS)のレベル評価を活用して、技能の向上を見える化することも効果的です。レベルが上がることで、本人のモチベーションが向上し、賃金アップにもつながります。
教育計画は文書化し、本人と共有しましょう。「今何を学んでいるか」「次に何を目指すか」が明確になることで、学習意欲が高まります。
資格取得の支援
建設業の各種資格取得を支援することで、外国人労働者のキャリアアップを後押しできます。技能講習の受講費用を会社が負担する、受講のための休暇を与えるなど、具体的な支援を行いましょう。
玉掛け技能講習、フォークリフト運転技能講習、足場の組立て等作業主任者など、建設現場で役立つ資格は多数あります。本人の希望や適性を考慮しながら、計画的に資格取得を進めていきます。
日本語能力試験(JLPT)の受験も奨励しましょう。日本語能力の向上は、安全性の向上やキャリアアップに直結します。
評価とフィードバック
定期的に仕事ぶりを評価し、フィードバックを行いましょう。良い点を褒めることはもちろん、改善点も具体的に伝えることが成長につながります。
評価面談は、少なくとも3ヶ月に1回程度実施します。評価シートを用意し、技能面、安全意識、協調性などの項目ごとに評価します。本人の自己評価と上司の評価を突き合わせることで、認識のズレを修正できます。
将来のキャリアについても話し合いましょう。「将来どのような仕事がしたいか」「どのような技能を身につけたいか」を聞き、会社としてどのようなサポートができるかを伝えます。
コミュニケーション環境の整備
言語や文化の違いを乗り越えるため、コミュニケーション環境を整えましょう。
翻訳ツールの活用
スマートフォンの翻訳アプリや翻訳機を現場に配備することで、日常的なコミュニケーションを円滑にできます。Google翻訳、VoiceTra、ポケトークなど、最近は精度の高い翻訳ツールも増えています。
ただし、翻訳ツールに頼りすぎるのも問題です。基本的な日本語のコミュニケーションも並行して習得できるよう、支援しましょう。
外国語が話せるスタッフの配置
可能であれば、外国人労働者の母国語を話せるスタッフを配置しましょう。完璧に話せなくても、基本的な会話ができるだけでコミュニケーションは大きく改善します。
既に在籍している外国人労働者に通訳を依頼することも有効です。同じ母国語を話す先輩がいることは、新しく入社した外国人にとって大きな安心材料となります。
定期的な面談
月に1回程度、個別面談の機会を設けましょう。仕事の悩みや生活上の困りごとを聞き、必要なサポートを提供することが、早期離職の防止につながります。
面談では、業務上の問題だけでなく、寮での生活、健康状態、母国の家族のことなど、幅広い話題に耳を傾けます。小さな悩みが大きな問題に発展する前に、対処することが重要です。
職場の受け入れ体制づくり
外国人労働者を受け入れる際、現場の日本人スタッフの理解と協力が不可欠です。
事前説明会の実施
外国人労働者が入社する前に、既存スタッフ向けの説明会を開催しましょう。外国人労働者の文化的背景や、コミュニケーションの取り方、サポート方法などを共有します。
「なぜ外国人を採用するのか」という経営的な背景も説明します。人手不足への対応、技術の継承、組織の活性化など、会社にとってのメリットを理解してもらうことで、受け入れへの協力が得られやすくなります。
指導担当者の選定
外国人労働者の指導を担当するスタッフを明確にしましょう。指導担当者には、外国人とのコミュニケーション方法や文化の違いについての研修を行うことが望ましいです。
指導担当者には手当を支給するなど、責任に見合った処遇を用意します。優秀な人材に指導を任せることで、外国人労働者の成長も早くなります。
職場全体での受け入れ意識の醸成
外国人労働者を「お客さん」ではなく「チームの一員」として受け入れる意識を、職場全体で共有しましょう。困っている様子があれば声をかける、積極的にコミュニケーションを取るなど、助け合う文化を作ることが重要です。
休憩時間に一緒に食事をする、仕事帰りに食事に誘うなど、仕事以外の交流も大切です。人間関係が良好であれば、仕事上のコミュニケーションもスムーズになります。
外国人労働者を雇用する際の注意点
法令遵守の徹底
外国人労働者を雇用する際は、関連法令を厳守する必要があります。違反した場合、罰則が科されるだけでなく、今後の外国人雇用が制限される可能性もあります。
在留資格の確認と管理
採用時には、必ず在留カードの原本を確認しましょう。コピーだけでは不十分です。在留カードの表面には氏名、生年月日、国籍、在留資格、在留期間などが記載されています。裏面には就労制限の有無が記載されているため、必ず確認します。
在留カードは定期的に確認し、更新時期を管理しましょう。更新手続きを忘れて在留資格が切れてしまうと、本人だけでなく雇用主も不法就労助長罪として処罰の対象となります。罰則は3年以下の懲役または300万円以下の罰金です。
在留期間の満了日の3ヶ月前になったら、本人に更新手続きを促します。必要に応じて、会社として手続きのサポートも行いましょう。
特定技能外国人の場合、在留期間は通算5年までという制限があることも忘れてはいけません。5年を超えて雇用を継続したい場合は、他の在留資格への変更が必要です。
適正な労働条件の確保
外国人労働者に対しても、労働基準法をはじめとする労働関連法令が適用されます。最低賃金、労働時間、休憩・休日、残業代の支払いなど、適切に管理しましょう。
「外国人だから安く雇える」という考えは誤りです。同じ仕事をする日本人労働者と同等以上の賃金を支払う必要があります。技能や経験に応じた適正な賃金設定が求められます。
特に建設業では長時間労働になりがちですが、2024年4月からの時間外労働上限規制を遵守する必要があります。原則として月45時間、年360時間を超える時間外労働はできません。災害時等の特別な事情がある場合でも、年720時間、複数月平均80時間、月100時間未満という上限があります。
社会保険への加入
外国人労働者も、要件を満たせば社会保険への加入が義務付けられています。「短期間で帰国するから」「本人が希望しないから」という理由で加入させないことは違法です。
健康保険、厚生年金保険、雇用保険、労災保険の各種社会保険について、加入要件を満たす場合は必ず加入手続きを行いましょう。社会保険に加入することで、外国人労働者も病気やケガの際に安心して治療を受けられます。
差別的取り扱いの禁止
国籍や人種を理由に、賃金や労働条件で差別的な取り扱いをすることは禁止されています。「外国人だから時給を低くする」「日本人にはボーナスを出すが外国人には出さない」「日本人は正社員だが外国人は契約社員」といった対応は違法です。
能力や経験、担当する業務内容に応じて、公平に処遇を決定しましょう。
技能実習制度の詳細
技能実習制度は、開発途上国への技能移転を目的とした制度です。制度の目的や活用方法について詳しく説明します。
制度の本質的な目的
技能実習制度の本来の目的は、日本で培われた技能や知識を開発途上国へ移転し、その国の経済発展を担う人材育成に協力することです。企業にとっては若者の労働力を確保できるメリットがありますが、あくまで「実習」であり「労働力の確保」が第一の目的ではない点を理解しておく必要があります。
この理念を忘れ、単なる安価な労働力として扱うと、様々な問題が発生します。技能実習計画に沿った適切な指導、技能移転の実施、人権の尊重が求められます。
建設業では、型枠施工、鉄筋施工、とび、左官、建築大工、配管、内装仕上げなど多くの職種で技能実習生を受け入れることができます。実務経験のある若者を3年から5年という期間で受け入れられるシステムとして、多くの建設企業が利用しています。
受け入れの具体的な手続き
技能実習生を受け入れるには、監理団体を通じて手続きを進めるのが一般的です。監理団体とは、技能実習生の受け入れを監理し、実習実施者(企業)への指導を行う非営利団体です。
主な流れは以下の通りです。
①監理団体への加入申し込み:信頼できる監理団体を選び、加入手続きを行います。
②技能実習計画の作成:受け入れる技能実習生がどのような技能を習得するか、詳細な計画を作成します。
➂外国人技能実習機構(OTIT)への認定申請:作成した技能実習計画を提出し、認定を受けます。
④在留資格認定証明書の交付申請:入国管理局に申請し、証明書の交付を受けます。
⑤実習生の入国・受け入れ:ビザを取得した実習生が来日し、実習を開始します。
これらの手続きには、企業概要書、技能実習計画書、雇用契約書、賃金台帳のサンプルなど、多くの書類が必要です。監理団体がサポートしてくれますが、企業側も必要な資料を準備する必要があります。
特に重要なのが技能実習計画の策定です。実習生がどのような技能を、どのような方法で、どの程度の期間で習得していくのかを具体的に示したマニュアルを作成します。この計画に基づいて実習を行うため、実態に即した現実的な計画を立てることが重要です。
段階的な技能習得プログラム
技能実習では、段階的に技能を習得させる教育計画が重要です。
1年目(技能実習1号)では、基礎的な技能の習得を目指します。安全教育や基本的な作業方法を丁寧に指導し、日本の建設現場のルールに慣れてもらいます。工具の名前や使い方、基本的な施工方法など、土台となる知識と技能を身につける期間です。
2年目以降(技能実習2号)では、より高度な技能の習得へと進みます。実際の現場での経験を積みながら、専門的な技術を身につけていきます。1号から2号への移行には、技能検定基礎級相当の試験に合格する必要があります。
4年目以降(技能実習3号)では、後輩の指導ができるレベルまで技能を高めます。2号から3号への移行には、技能検定3級相当の試験に合格することが求められます。3号実習を行うには、優良な実習実施者として認定される必要もあります。
技能実習制度を活用することで、若者に実務的な経験を積ませながら、自社の戦力としても育成できます。ただし、労働力としてだけ見るのではなく、技能移転という本来の目的を忘れずに、丁寧な指導を心がけることが重要です。
特定技能制度の全体像
特定技能制度は、即戦力となる外国人材を受け入れるための新しいシステムです。建設業にとって非常に重要な制度ですので、詳しく解説します。
制度創設の背景と目的
特定技能制度は2019年4月に創設された在留資格で、人手不足が深刻な産業分野において、一定の専門性と技能を持つ外国人を受け入れる制度です。技能実習制度とは異なり、最初から労働力として外国人を雇用することを目的としています。
建設業は特定技能制度の対象分野の一つで、型枠施工、左官、コンクリート圧送、トンネル推進工、建設機械施工、土工、屋根ふき、電気通信、鉄筋施工、鉄筋継手、内装仕上げ、とび、建築大工、配管、建築板金、保温保冷、吹付ウレタン断熱、海洋土木工の18の業務区分が設定されています。それぞれの分野で即戦力となる人材を採用できます。
特定技能1号の在留期間は通算5年です。技能実習2号を良好に修了した外国人や、建設分野特定技能評価試験に合格した外国人が対象となります。基本的な日本語能力と建設分野の知識・技能を持っていることが前提です。
外国人に求められる要件
特定技能外国人として建設業で働くには、以下の要件を満たす必要があります。
技能面では、18の業務区分ごとに設定された技能試験に合格するか、該当する職種の技能実習2号を良好に修了している必要があります。技能試験では、実際の作業に必要な知識と技能が問われます。学科試験と実技試験の両方に合格しなければなりません。
日本語能力については、日本語能力試験(JLPT)のN4レベル以上、または国際交流基金日本語基礎テストに合格していることが求められます。建設現場では安全上のコミュニケーションが重要なため、基本的な日本語能力は必須です。N4レベルは、基本的な日本語を理解できるレベルとされています。
これらの要件を満たした外国人は、特定技能1号の在留資格で建設業に従事できます。技能実習2号を修了した外国人の場合、試験が免除されるため、スムーズに特定技能へ移行できます。
受け入れ企業に課される義務
また、建設業で特定技能外国人を雇用する企業側にも要件があります。
まず、建設業の許可を持っていることが必要です。無許可で建設業を営む企業は、特定技能外国人を雇用できません。
建設キャリアアップシステム(CCUS)に事業者登録していることも必須です。CCUSは、建設技能者の資格、社会保険加入状況、現場の就業履歴などを登録・蓄積する制度で、技能者のキャリアアップを支援します。
一般社団法人建設技能人材機構(JAC)の正会員であることも求められます。JACは、特定技能外国人の受け入れを適正に行うため、国土交通省の指導の下に設立された組織です。JACに加入することで、受け入れに関する支援を受けられます。
国土交通大臣が告示で定める基準に適合することも必要です。具体的には、労働関係法令・社会保険関係法令に違反していないこと、過去5年間に建設業法等の違反がないことなどが求められます。
これらの要件を満たさなければ、特定技能外国人を雇用できません。要件を満たしているか、事前に確認しましょう。
雇用契約における重要事項
特定技能外国人との雇用契約では、適切な契約内容と書類の整備が極めて重要です。
まず、報酬額は同じ業務を行う日本人と同等以上でなければなりません。身分や国籍による差別は許可されていません。雇用契約書には、業務内容、就業場所、労働時間、休日、賃金、契約期間などを明確に記載します。
また、特定技能外国人に対しては、1号特定技能外国人支援計画に基づいた支援を実施する必要があります。職業生活上、日常生活上、または社会生活上の支援を行い、外国人が安定して働ける環境を整えることが求められます。
支援内容には、事前ガイダンスの提供、出入国時の送迎、住居確保・生活に必要な契約支援、生活オリエンテーションの実施、公的手続きへの同行、日本語学習の機会提供、相談・苦情への対応、日本人との交流促進、転職支援、定期的な面談などが含まれます。
これらの支援は、自社で行うことも、登録支援機関に委託することもできます。多くの企業では、専門的な知識とノウハウを持つ登録支援機関に委託しています。
雇用契約を結ぶ際は、外国人が内容を十分に理解できるよう、母国語での説明や翻訳資料の提供が望ましいです。契約内容に関するトラブルを防ぐため、書類は丁寧に作成し、双方が納得した上で締結しましょう。
その他の在留資格とその適用
建設業では、技能実習や特定技能以外にも、様々な在留資格を持つ外国人を雇用できます。
建設業で活用できる主な在留資格は以下の通りです。
【身分に基づく在留資格(就労制限なし)】
(永住者):法務大臣から永住の許可を受けた者です。在留期間に制限がなく、就労制限もありません。あらゆる職種で働くことができます。
(日本人の配偶者等):日本人と結婚している外国人や、日本人の子として出生した者などが該当します。こちらも就労制限がなく、在留期間は最長5年です。
(永住者の配偶者等):永住者の配偶者や、永住者の子として日本で出生し引き続き在留している者が対象です。就労制限はありません。
(定住者):日系3世や外国人配偶者の連れ子など、法務大臣が特別な理由を考慮し一定の在留期間を指定して居住を認める者です。こちらも就労制限がありません。
これらの身分に基づく在留資格を持つ外国人は、就労制限がないため、建設現場での作業から事務作業まで、幅広い業務を任せられます。
【就労資格】
(技術・人文知識・国際業務):大卒以上の学歴または実務経験10年以上を持ち、専門的な知識や技術を必要とする業務に従事する外国人のための在留資格です。建設会社での設計、CADオペレーター、施工管理、海外業務などに従事できます。ただし、単純な現場作業は認められていません。
資格外活動許可を受けた留学生
週28時間以内(夏休み等の長期休暇中は1日8時間以内)であれば、資料作成や軽作業などのアルバイトが可能。
各資格の適用範囲について
在留資格によって、できる仕事の範囲は大きく異なります。
身分に基づく在留資格(永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者)を持つ外国人は、就労制限がありません。建設現場での作業はもちろん、どのような職種でも就労が可能です。在留期間も他の資格と異なり、永住者は無期限、配偶者等は最長5年と長く滞在できます。
一方、技術・人文知識・国際業務の在留資格では、専門的な知識や技能を必要とする業務に限定されます。単純な現場作業は認められず、設計や施工管理といった技術職や事務職が対象となります。
留学生が資格外活動許可を得てアルバイトをする場合、週28時間という時間制限があります。また、風俗営業関連の仕事は禁止されています。建設業では、事務補助や資料整理などの業務であれば可能性があります。
在留カードの裏面には「就労制限の有無」が記載されていますので、必ず確認しましょう。「就労不可」と記載されている場合でも、資格外活動許可を受けていれば一定の範囲で就労できます。
企業における活用事例を紹介する
実際の企業では、これらの在留資格を持つ外国人をどのように活用しているのでしょうか。
ある中堅建設会社では、永住者の資格を持つベトナム出身の労働者を複数雇用しています。就労制限がないため、現場作業から事務作業まで幅広い業務を任せられています。日本語も堪能なため、通訳としても活躍し、特定技能や技能実習の外国人スタッフとの橋渡し役を担っています。
別の建設会社では、日本の大学で建築を専攻し「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を取得した外国人を、CADオペレーターや施工管理の補助として採用しています。専門知識を活かせる職種であり、将来的には施工管理技士の資格取得を目指しています。
また、定住者の在留資格を持つ日系ブラジル人を多く雇用している企業もあります。身分に基づく在留資格のため就労制限がなく、長期的に安定して働いてもらえる点が評価されています。
このように、在留資格の種類によって活用方法は異なります。それぞれの資格の特徴を理解し、自社に合った人材を採用することが重要です。
安全管理の徹底
建設現場では、外国人労働者の安全確保が最優先課題です。
言語の壁を越えた安全教育
外国人労働者への安全教育では、日本語だけに頼らない工夫が必要です。母国語に翻訳した安全マニュアルの作成、イラストや写真を多用した視覚的な教材、実演による指導など、複数の方法を組み合わせましょう。
特に「危険」「禁止」「注意」といった基本的な安全用語は、確実に理解してもらう必要があります。現場でよく使う安全に関する日本語フレーズをリスト化し、反復練習することも効果的です。
KY活動への参加
危険予知活動(KY活動)には、外国人労働者も積極的に参加させましょう。最初は日本語が十分でなくても、ジェスチャーや簡単な言葉で危険箇所を指摘できるようサポートします。
ヒヤリハット報告の習慣化
小さな事故やヒヤリとした経験を報告する習慣を、外国人労働者にも定着させることが重要です。報告しやすい環境を作り、報告したことで評価される文化を醸成しましょう。
文化的配慮
外国人労働者の文化的背景を理解し、配慮することも大切です。
宗教への配慮
イスラム教徒の場合、1日5回の礼拝が必要です。礼拝場所の確保や、礼拝時間への配慮を検討しましょう。ラマダン(断食月)期間中は、日中の飲食を控えるため、作業内容や休憩の取り方に配慮が必要な場合もあります。
食事への配慮
宗教や文化により、食べられないものがある場合があります。会社で昼食を提供する場合や、懇親会を開く場合は、事前に確認しましょう。
コミュニケーションスタイルの違い
国によって、コミュニケーションスタイルは異なります。日本では「察する」文化が重視されますが、多くの国では明確な指示や説明が好まれます。曖昧な表現を避け、具体的に伝えることを心がけましょう。
定期的な面談とフォロー
外国人労働者の定着には、定期的なコミュニケーションが欠かせません。
月に1回程度、個別面談の機会を設け、仕事の悩みや生活上の困りごとを聞きましょう。些細なことでも相談できる関係性を築くことが、トラブルの予防につながります。
また、在留資格の更新時期や、技能試験の受験時期なども把握し、必要なサポートを提供しましょう。
成功事例と今後の展望
外国人採用の成功事例
建設業で外国人採用に成功している企業の事例を紹介します。
事例1:中堅建設会社A社の取り組み
従業員50名規模の建設会社A社では、5年前から技能実習生の受け入れを開始し、現在では15名の外国人労働者(技能実習生10名、特定技能5名)が活躍しています。
成功の鍵は、受け入れ体制の整備に時間をかけたことです。外国人労働者を受け入れる半年前から、現場スタッフ向けの研修を実施し、外国人とのコミュニケーション方法や文化の違いについて学びました。
また、ベトナム語の安全マニュアルを作成し、イラストを多用した視覚的に分かりやすい教材を準備しました。指導担当者には手当を支給し、責任を持って育成に取り組む体制を整えました。
現在では、技能実習を修了した外国人が特定技能に移行し、中核的な戦力として現場を支えています。若手の日本人採用が難しい中、外国人労働者の存在が企業の成長を支えています。
事例2:大手建設会社B社のグローバル戦略
従業員300名規模の建設会社B社は、10年以上前から外国人採用に取り組んでいます。現在では約40名の外国人労働者が在籍し、国籍も多様です。
B社の特徴は、外国人労働者のキャリアパスを明確に示していることです。技能実習から特定技能へ、そして将来的には正社員として施工管理の道も開かれています。実際に、技能実習生として入社し、現在は施工管理技士の資格を取得して現場監督として活躍している外国人社員もいます。
また、母国とのビジネス展開も視野に入れており、帰国した元社員とのネットワークを活用して、海外プロジェクトにも取り組んでいます。
事例3:専門工事会社C社の地域密着型アプローチ
従業員20名規模の型枠工事会社C社では、地域の外国人コミュニティと連携した採用を行っています。
最初の1名を知人の紹介で採用したところ、真面目に働く姿勢が評価され、その外国人労働者の紹介で次々と仲間が入社しました。現在では8名の外国人労働者が在籍し、全員が同じ国の出身です。
同郷の仲間がいることで、日本での生活の不安も軽減され、定着率が非常に高いのが特徴です。先輩が後輩を指導する体制も自然にでき、会社としても教育コストを抑えられています。
外国人採用のメリットを最大化するポイント
これらの成功事例から、外国人採用を成功させるポイントが見えてきます。
(ポイント1)受け入れ体制の整備に時間をかける
外国人を採用する前に、現場の理解と協力を得ることが重要です。
(ポイント2)丁寧な教育と継続的なサポート
言語や文化の違いを考慮し、根気強く指導することが定着につながります。
(ポイント3)キャリアパスの明確化
長期的な展望を示すことで、モチベーションを維持できます。
(ポイント4)コミュニティの活用
外国人労働者同士のつながりは、精神的な支えとなります。
(ポイント5)企業文化への統合
「外国人だから」ではなく「チームの一員」として受け入れる姿勢が重要です。
今後の展望
建設業における外国人採用は、今後さらに重要性を増すと考えられます。
特定技能2号の拡大
2023年6月に、特定技能2号の対象分野が拡大され、建設業も含まれることになりました。特定技能2号は在留期間の更新に制限がなく、家族の帯同も可能です。これにより、長期的に外国人材を活用できる道が開かれました。
デジタル技術との融合
AI翻訳や遠隔指導システムなど、デジタル技術の発展により、言語の壁は徐々に低くなっています。今後は、こうした技術を活用することで、より効率的に外国人労働者と協働できるようになるでしょう。
グローバル展開への布石
外国人労働者との協働経験は、企業のグローバル対応力を高めます。将来的に海外展開を考えている企業にとって、外国人採用は貴重な第一歩となります。
多様性がもたらす組織の活性化
異なる文化や価値観を持つ人材が集まることで、組織に新しい視点や発想が生まれます。これは、イノベーションや問題解決能力の向上につながる可能性があります。
課題と対策
一方で、解決すべき課題も残されています。
受け入れコストの問題、言語教育の充実、地域社会との共生、帰国後のキャリア支援など、取り組むべきテーマは多岐にわたります。
これらの課題に対しては、業界全体での取り組みや、行政の支援策の活用が重要です。一社だけで解決するのではなく、協同組合や業界団体を通じた情報共有や連携が効果的でしょう。
本記事のまとめ
建設業における外国人採用について、重要なポイントをまとめます。
外国人採用の必要性
・建設業界の深刻な人手不足と高齢化
・若年層の業界離れへの対応
・年問題による労働時間制限
主な在留資格
・特定技能1号:即戦力となる外国人材(18業務区分)
・技能実習:技能移転を目的とした制度(最長5年)
・技術・人文知識・国際業務:専門職向け
・身分に基づく在留資格:就労制限なし
採用時の注意点
・在留カードの有効期限と真偽確認
・在留資格と業務内容の一致
本記事では、前回の記事よりさらに具体的な内容で外国人採用の受け入れに関しての情報をお届けいたしました。外国人採用に関して、採用活動自体が難しそうと感じる方も多いと思います。
ですが、参入してる企業が比較的少ない領域だからこそ得られるメリットがたくさんあります。
そして、慢性的な人手不足の解消には、いくつものアプローチが必要になってくる時代です。
本記事をきっかけにいろいろなアプローチ法を実施する企業様が増えれば幸いでございます。
また、他の方法で人材不足を解消したい方には、前述でも紹介したように高卒採用がおすすめです。
高卒採用Labは、高卒採用【高卒採用がはじめてのかたへ】を考えている企業のための情報メディアです。
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この記事を読んで外国人採用に少しでも興味を持たれた方は、ぜひこちらの資料をご確認ください。外国人採用を始めるにあたって必要な情報を1冊にまとめております。
◆この資料で分かること