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深刻化する建設業の人手不足!その原因と対策を徹底解説

建設業界では、深刻化する人手不足が大きな課題となっています。 この記事では、国土交通省が発表している統計データなどを参考に、建設業界の人手不足の現状を分かりやすく解説します。 さらに、長時間労働や危険作業のイメージが先行しがちな業界の課題や、他業種との競合、若手人材の確保の難しさなど、人手不足の「原因」を深掘りし、建設業界が未来に向けて持続的に成長していくために必要な、具体的な「対策」についてもご紹介します。

1. 建設業界における人手不足の現状

日本の建設業界は深刻な人手不足に直面しており、その影響は建設プロジェクトの遅延やコスト増加、さらには経済活動全体の停滞にも波及する可能性が懸念されています。国土交通省の「建設業就業者数」によると、2022年の建設業就業者数は約449万人とされ、ピーク時の1997年と比較すると約300万人減少しています。

人手不足の統計データとその背景

建設業における人手不足の現状を如実に表すデータとして、厚生労働省が発表している「一般職業紹介状況」があります。この統計によると、2023年7月の有効求人倍率は全職業平均で1.30倍であるのに対し、建設業では2.61倍と極めて高い水準で推移しています。建設業界では求人を出してもなかなか人が集まらない状況が続いているのです。

この背景には、日本社会全体における少子高齢化の進展が挙げられます。生産年齢人口の減少は労働力不足に直結し、特に体力勝負のイメージが強い建設業界では若年層の敬遠も相まって、人材確保が困難になっています。加えて、バブル崩壊以降の公共事業削減や建設投資の抑制により、業界全体の規模が縮小したことも人材流出に拍車をかけてきました。

労働人口の減少と高齢化の影響

日本の労働人口は減少の一途をたどっており、建設業界もその影響を大きく受けています。総務省統計局の「労働力調査」によると、2023年7月の15歳から64歳までの生産年齢人口は7,450万人と、前年同月と比べて17万人減少しました。これは1968年の統計開始以来、56年連続の減少となります。他の産業と比較しても建設業は高齢化が急速に進んでいます。国土交通省の調査によると、建設業の就業者に占める55歳以上の割合は2022年時点で35.7%に達しており、全産業平均の29.1%を大きく上回っています。これは、若年層の建設業界への新規参入が少なく、高齢の就業者が退職を先延ばしにせざるを得ない状況を反映していると考えられます。高齢化の進展は、熟練技能の喪失や労働災害の増加リスクなど、様々な問題を引き起こす可能性があります。

他業種との競争による人材流出

建設業界の人手不足は、他業種との競争激化も大きな要因となっています。特に近年は、IT業界やサービス業界など、比較的労働環境が良いとされる業界が人気を集めており、若年層を中心に人材の流動化が進んでいます。一方で、建設業界は長時間労働や危険作業のイメージが根強く、他業種と比較して賃金水準が低いことも要因の一つです。厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」によると、2022年の建設業の平均月収は39万7千円となっており、全産業平均の42万2千円を下回っています。特に、若年層にとって魅力的な給与水準とは言えず、他業種との競争で不利な立場に立たされているのが現状です。人材を確保し、定着率を向上させるためには、労働環境の改善や賃金水準の引き上げなど、抜本的な対策が求められています。

建設業特有の労働環境の課題

建設業界は、労働環境の厳しさも人手不足の大きな要因となっています。屋外での作業が多く、天候に左右されやすいという側面に加え、重労働や危険を伴う作業も多いことが挙げられます。また、プロジェクトの進捗状況によっては、休日出勤や残業が発生することも珍しくありません。近年では、働き方改革の推進により、長時間労働の是正や休日の取得促進など、労働環境の改善に向けた取り組みが進められていますが、依然として他業種と比較して厳しい状況であることは否めません。人材を確保するためには、労働時間管理の徹底や休暇取得の推奨などが求められます。

技能継承の難しさと若手育成の課題

建設業界では、長年培ってきた熟練技能の継承が大きな課題となっています。高齢化の進展により、ベテランの退職が相次いでいる一方で、若年層の入職は少なく、技能の伝承がうまくいっていないのが現状です。熟練技能の不足は、工事の品質低下や工期の延長、さらには労働災害の発生リスクを高める可能性も孕んでいます。

この課題を解決するために、若手技能者の育成が急務となっています。国土交通省は、建設技能者の育成や資格取得の支援、建設現場におけるICT(情報通信技術)の活用促進など、様々な取り組みを推進しています。しかし、若手技能者を育成するためには、単に技術的な指導を行うだけでなく建設業の魅力を伝えていくことが重要です。

2. 人手不足の原因を探る

労働条件の改善要件と課題

建設業は、他の産業と比較して、労働時間の長さや賃金の低さ、休暇の取得のしにくさなど、労働条件の厳しさが指摘されてきました。近年では、働き方改革の影響もあり、労働時間短縮や待遇改善に取り組む企業も増えてきましたが、依然として他業種と比べて魅力的な条件とは言えないケースが多く、これが人材確保の大きな障壁となっています。

項目建築業全産業
月間平均労働時間(2023年)160.5時間139.7時間
年間平均出勤日数(2023年)241日211日
上記のように、建設業は全産業平均と比較して、労働時間が長く、休日数が少ない傾向にあります。このような状況を改善し、従業員にとって働きやすい環境を整備することが、人材不足の解消に不可欠です。
参照:厚生労働省「毎月勤労統計調査」

技術革新と従業員スキルのミスマッチ

建設業界では、近年、BIM/CIMなどのデジタル技術や、AI、IoTなどの先端技術の導入が進んでいます。これらの技術革新は、生産性の向上や安全性向上に貢献する一方、従業員に求められるスキルも高度化しており、従来の技能だけでは対応が難しくなっています。特に、ICT技術を使いこなせる人材や、データ分析やプログラミングなどの専門知識を持つ人材が不足しており、企業は、新たな人材の育成や外部からの調達に力を入れる必要に迫られています。従業員側も、時代の変化に対応したスキルアップが求められますが、従来の経験や知識に固執してしまうと、新たな技術に対応できず、雇用機会を逃してしまう可能性もあります。

地域差による人材獲得の難しさ

建設業は、その性質上、現場作業が中心となるため、都市部への人口集中や地方の過疎化の影響を受けやすく、地域によって人材不足の深刻さに差が生じています。一方、都市部においても、大規模な再開発事業やインフラ整備などの需要は高く、人材の奪い合いが激化しています。地域間の需給バランスの調整や、地方の魅力向上など、地域特性に合わせた対策が求められています。

新規参入者へのハードル

建設業は、他の産業と比較して、初期投資や資格取得、業界特有の商慣習など、新規参入の障壁が高い傾向にあります。そのため、新規参入が少なく、競争が促進されにくいという側面があります。また、既存の企業間では、長年の取引関係や協力体制が構築されており、新規参入者が参入しにくい状況も存在します。新規参入を促進するためには、規制緩和や行政による支援、業界団体による情報提供など、多角的な取り組みが必要となります。

これらの原因を踏まえ、建設業界全体で、労働環境の改善、人材育成の強化、イメージアップなどに取り組むことが、人手不足の解消に繋がるでしょう。また、若年層や女性にとっても魅力的な職場環境を整備し、建設業の未来を担う人材を確保していくことが重要です。

3. 解決に向けた具体的な対策

建設業の人手不足解消には、業界全体で魅力を高め、人材を引きつけ、育成する戦略が不可欠です。具体的な対策を3つの視点から解説します。

魅力的な職場環境の構築

労働時間管理の徹底と休暇取得の促進
長時間労働の改善は重要な課題です。ICTを活用した施工管理や工程管理の効率化を進め、労働時間の削減を目指します。また、週休2日制の徹底や有給休暇の取得促進など、休暇を取得しやすい環境整備も重要です。厚生労働省の「働き方改革推進支援助成金」などを活用し、制度導入を支援することも有効です。
・勤務間インターバル制度の導入
・フレックスタイム制や時短勤務制度の導入
・年間休日数の増加や計画年休取得制度の導入
これらの制度導入により、従業員は仕事とプライベートのバランスを調整しやすくなり、より働きやすい環境を実現できます。働き方改革は、企業イメージの向上にも繋がり、人材確保の面でもプラスに働きます。

 賃金水準の見直しと待遇改善
他業種と比較して低い水準にある賃金を見直し、若年層にとって魅力的な水準にする必要があります。経験や能力に応じた評価制度を導入し、頑張りが給与に反映される仕組みを構築することが重要です。また、社会保険の完備や退職金制度の充実など、福利厚生面も改善していく必要があります。国土交通省の「建設キャリアアップシステム」を活用し、経験や技能を「見える化」することで、適切な評価と処遇につなげることが重要です。

働きがいを感じられる環境づくり
建設業は社会貢献性の高い仕事です。従業員が働きがいを感じられるよう、建設プロジェクトの社会的意義や地域貢献への取り組みを積極的に発信していくことが重要です。また、従業員同士のコミュニケーションを促進するイベントや社内交流の機会を増やすことも、働きやすい環境づくりに繋がります。従業員満足度調査などを定期的に実施し、従業員の声を職場環境改善に活かしていくことも大切です。

 採用戦略の見直しと多様化

求人情報の充実と効果的な発信
求人情報には、給与や休日などの基本的な労働条件だけでなく、仕事内容の魅力ややりがい、社内の雰囲気などが伝わるように、写真や動画などを活用して具体的に分かりやすく掲載する必要があります。自社のホームページや建設業界専門の求人サイト、SNSなどを活用し、幅広い層にアプローチすることが重要です。また、会社説明会や職場見学会を積極的に開催し、応募者に仕事内容や職場環境を直接体験してもらう機会を設けることも効果的です。例えば、建設現場の見学会や体験イベントなどを開催し、若年層に建設業の魅力を直接伝えることができます。VR(仮想現実)やAR(拡張現実)などの最新技術を活用し、建設現場を疑似体験できるコンテンツを制作、配信する取り組みも始まっています。これらの取り組みを通して、建設業に対するネガティブなイメージを払拭し、若年層にとって魅力的な業界であることをアピールしていく必要があります

採用ルートの多様化
従来の新卒採用や中途採用に加え、インターンシップや地域との連携、外国人労働者の採用など、多様な採用ルートを開拓する必要があります。インターンシップは、学生に建設業の魅力を伝える良い機会となります。また、高校や大学と連携し、建設業への理解を深める活動を行うことも重要です。外国人労働者の採用は、言葉や文化の違いを乗り越えるためのサポート体制の整備が重要となります。

採用ルート具体的な内容メリット
新卒採用大学や専門学校の新卒者を対象とした採用活動企業文化に馴染みやすく、長期的な育成が見込める
中途採用経験者や即戦力となる人材を対象とした採用活動即戦力として期待できる、経験やスキルを活かせる
インターンシップ学生に一定期間、就業体験の機会を提供する制度企業の仕事内容や雰囲気を理解してもらい、ミスマッチを防ぐ
地域連携地元の高校や大学と連携し、就職説明会や企業訪問などを実施地域に根ざした採用活動が可能、地元への定着促進
外国人労働者技能実習制度や特定技能制度などを活用した外国人労働者の採用人手不足の解消、国際化への対応

教育機関との連携
小中学校や高校と連携し、建設業の仕事内容や魅力を伝える出前授業や職場体験学習を実施する取り組みも有効です。若いうちから建設業に触れる機会を増やすことで、将来の進路選択の一つとして建設業を考えてもらうきっかけとなります。また、大学や専門学校と連携し、インターンシップの受け入れや共同研究などを実施することで、優秀な人材を確保する取り組みも重要です。企業側が積極的に情報発信を行い、建設業への理解を深めてもらうことが重要です。

ダイバーシティ&インクルージョン
建設業は男性中心のイメージが強く、女性の進出が遅れているのが現状です。女性が働きやすい環境を整備することで、女性労働力の活用を進めることができます。また、高齢者や障がい者など、多様な人材が活躍できる環境づくりも重要です。建設業は体力勝負というイメージを払拭し、女性や高齢者でも働きやすい職場環境を作ることで、人材の幅が広がります。例えば、重機の自動化やアシストスーツの導入など、体力的な負担を軽減する技術の導入も有効です。

 教育・研修プログラムの強化

入社員研修の充実
建設業の基礎知識や技能を習得するための研修に加え、社会人としてのビジネスマナーやコミュニケーション能力を向上させる研修も重要です。新入社員が安心して仕事に取り組めるよう、メンター制度を導入し、先輩社員がマンツーマンで指導する体制を整えることも有効です。また、現場でのOJTだけでなく、Off-JTを組み合わせることで、より効果的な研修を実施できます。Off-JTでは、座学やグループワークなどを通して、現場で必要な知識や技能を体系的に学ぶことができます。

専門スキル向上のための研修
建設業は専門性が高い業界であるため、従業員が常に最新の知識や技術を習得できるよう、専門スキル向上のための研修制度を充実させる必要があります。資格取得支援制度を導入し、従業員のスキルアップを奨励することも重要です。具体的には、施工管理技士や建築士などの資格取得に向けた研修や、ICT施工やBIM/CIMなどの先端技術に関する研修などを実施します。また、外部の研修機関と連携し、専門性の高い研修を受講できる機会を設けることも有効です。

キャリアパス設計のサポート
従業員が自身のキャリアプランを描き、目標を持って仕事に取り組めるよう、キャリアパス設計のサポート体制を構築する必要があります。定期的な面談やキャリアコンサルティングなどを通して、従業員のキャリアプランを把握し、必要な研修や教育を提供することが重要です。また、年齢や経験に応じた昇進・昇格の機会を設け、従業員のモチベーション向上を図ることも大切です。従業員一人ひとりの能力や適性を見極め、それぞれのキャリアプランに合わせた研修や教育プログラムを提供することで、従業員の成長を促進し、企業全体の活性化に繋げることができます。

4. まとめ

建設業の人手不足は、労働人口の減少や高齢化、他業種との競争激化、建設業特有の労働環境などが複雑に絡み合った結果であり、もはや業界全体で取り組むべき喫緊の課題となっています。 その解決策として、労働条件の改善、採用戦略の見直し、教育・研修プログラムの強化、若年層へのアピールなど、多角的な視点からの取り組みが重要です。 建設業は日本の社会基盤を支える重要な産業です。業界全体で人材不足問題に真剣に取り組み、未来に向けて持続可能な産業構造を構築していく必要があると言えるでしょう。

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