【2023年最新】定着率の平均は?離職率との違い改善する方法
少子高齢化により労働力の確保が企業課題のひとつとなっている中、労働力を確保する方法は新しい人材を増やすことだけではありません。
在籍している優秀な社員が流出しないよう、定着率を上げることも重要な要素です。
この記事では、定着率の重要性や計算方法、定着率低下の要因と改善策について解説します。
定着率の平均を理解し、社員の定着率向上を目指す方はぜひ最後までご覧ください。
定着率とは?計算方法や離職率との違い
自社の定着率を知ることは、企業の中長期的な経営において重要なポイントのひとつです。
ここでは定着率の定義をはじめ、計算方法、離職率との違いについて取り上げます。
定着率=入社した社員が一定期間後も働き続けている割合
定着率は、入社後に社員がどれだけ継続して働いているかを示す割合のことです。算出する際の期間に明確な定めはなく、企業によって1年・3年など異なります。
定着率の高低は、企業を表す目安のひとつとして以下のように判断できるでしょう。
- 定着率が高い:社員が定着している=離職者が少ない、快適な労働環境
- 定着率が低い:社員が定着していない=離職者が多い、不適な労働環境
定着率は、企業の経営状態を表すバロメーターとして捉えられており、就職先を探す際に重視する方が多い要素のひとつでもあります。
定着率の計算方法
定着率は、次の計算式で算出できます。
(一定期間後の在籍社員数÷一定期間開始時に入社した社員数)×100=定着率(%)
例えば4月に20名が入社し、1年経過した時点で17名在籍している場合、数字を計算式に当てはめると「(17÷20)×100=85」になり、定着率は85%とわかります。
計算時は、在籍社員数に期間の途中で入社した社員の数を含めないよう注意してください。
算出する対象期間によって数値は変動するため、定着率が低い場合は対象期間中にあった出来事を把握し、要因を探ることが改善の糸口になります。
定着率と離職率の違い
離職率は、社員が一定期間中にどれだけ離職したかを示す割合のことです。
定着率と離職率はどちらも社員の割合を示す指標ですが「在籍している社員」と「離職した社員」どちらの割合を示すかが異なります。
高い離職率は離職者数が多いことを示すため、離職率が高い=定着率が低いと言い換えられます。定着率と離職率は、対となる指標であるといってもよいでしょう。
定着率を把握している場合、離職率は「100-定着率」の計算式で算出可能です。
定着率・離職率を認識することが、自社の成長につながる大きな一歩となります。
定着率を確認したい時期
定着率は基本的に年単位で計算となります。
新卒社員が入社する年度初めの4月を区切りとして算出し、分析するとよいでしょう。
対象とする期間もさまざまですが、短ければ1年や3年、長くて5年や10年などが多いです。それぞれの企業が自社の状況や目的に合わせて算出しています。
また定着率が高い採用方法・低い採用方法など採用した方法まで残しておくと良いでしょう。
【データで見る】定着率・離職率の平均
自社の定着率を算出しても、基準がわからず困っている方も多いのではないでしょうか。
ここでは日本全体・新卒・業界・雇用形態別に、定着率と離職率の平均をご紹介します。ぜひ自社の数値と照らし合わせてみてください。
【日本全体】定着率・離職率の平均
厚生労働省の発表によると、2022年の日本全体における定着率は85.0%、離職率は15.0%です(対象期間は1年)。
前年(2021年)は定着率86.1%、離職率13.9%であったため、離職率の微増に伴い定着率は1.1%低下しています。2020年以前も離職率はおおよそ15%を中心に変動しているため、コロナ禍による影響は少ないといえるでしょう。
男女別で見ても、2022年は男性離職率13.3%、女性離職率16.9%とそれほど大きな差はありません。
参考:厚生労働省「令和2年雇用動向調査結果の概況」
【新卒】定着率・離職率の平均
画像引用・参考:厚生労働省「新規学卒者の離職状況」
厚生労働省(2023年10月時点)の発表によると、新卒(大卒・高卒)の就職後3年以内の定着率・離職率は以下の通りです。
- 大卒:定着率67.7%、離職率32.3%
- 高卒:定着率63.0%、離職率37.0%
※対象:2020年(令和1年)3月卒で、2020年3月1日~2023年3月31日までの間に離職した新規学卒者
大卒・高卒ともに離職率は30%を超えており、そのうち1割以上が就職後3年以内に離職しているという結果です。
過去に高卒は離職率が40%を超えている年もありますが、大卒に至っては20年近く離職率が30%前後となっており、大きな変化は見られません。
【業界別】定着率・離職率の平均
厚生労働省の発表によると、2022年の業界別定着率・離職率は以下の通りです。
- 宿泊業・飲食サービス業:定着率73.2%、離職率26.8%
- その他サービス業:定着率80.6%、離職率19.4%
- 生活関連サービス業・娯楽業:定着率81.3%、離職率18.7%
- 医療・福祉:定着率84.7%、離職率15.3%
宿泊業・飲食サービス業が唯一離職率20%を超えており、そのあとにその他、生活関連といずれも「サービス業」が続いています。
医療・福祉の離職率は15.3%に留まっており、なかには離職率が10%以下の業界もあるため、業界による平均値の差は大きいといえます。
【雇用形態別】定着率・離職率の平均
厚生労働省の発表によると、2022年の雇用形態別定着率・離職率は以下の通りです。
- 正規社員(一般):定着率88.2%、離職率11.8%
- 非正規社員(パート):定着率76.9%、離職率23.1%
正規社員と非正規社員では、離職率に2倍近く差があります。
正規社員は長期雇用がほとんどですが、非正規社員の雇用期間は短期~長期まで幅広く、短期間で社員が入れ替わることもある点が要因のひとつと考えられます。
非正規社員の定着率が正規社員より低いことは、一般的であるといえるでしょう。
定着率はなぜ重要?
定着率を知ることは、企業が社員にとって「快適な労働環境を提供できているかどうか」を測る指標になります。
ここでは、定着率の「高さがもたらすメリット」「低さがもたらすデメリット」について解説します。
定着率が高いことによるメリット
定着率の高さがもたらすメリットは、以下の4つです。
- 採用・教育コストの削減
- 既存社員の意欲向上
- 生産性の向上・業績の安定
- 優秀な人材の確保
定着率が高い=社内の人材が流出しないため、新たな人員を補充する必要がなく、採用・教育コストが削減できます。
社員同士の信頼関係が築かれていることも多く、快適な職場環境が整っていることで仕事のモチベーションがアップし、生産性の向上や業績の安定にもつながるでしょう。
また、定着率の高さは採用活動時のアピール要素にもなるため、優秀な人材を確保しやすくなる可能性も考えられます。
定着率が低いことによるデメリット
定着率の低さがもたらすデメリットは、以下の3つです。
- 採用・教育コストがかかる
- 生産性が低下する
- 業績が不安定になる
頻繁に離職が繰り返されることで慢性的な人手不足に陥り、新たな人材を確保するための採用コストや新入社員の教育コストがかかります。
部署内の人員が入れ替わるたびに業務の引き継ぎや指導が発生するため、本来の業務が滞り、生産性の低下にもつながるでしょう。生産性の低下が続くことで業績が悪化し、さらに離職者が増えるなど、悪循環を招く可能性も考えられます。
定着率が下がる原因と改善方法
定着率の低下には、給与・待遇への不安や人間関係の悩みなど、さまざまな要因があります。要因は1つだけに限らず、複数の不安や悩みが積み重なり複雑化することで離職につながっているとも考えられるでしょう。
ここでは、定着率が下がる原因を改善方法と併せて5つご紹介します。
仕事内容が合わない
1つ目は、仕事内容が自分の適性に合っていないことです。
「入社前にイメージしていた仕事とギャップがある」「やりたくない業務を任されている」など、仕事にやりがいを感じない場合、自分の得意が活かせる・やりたい仕事ができる環境を求めて転職する方が増えてしまうでしょう。
改善方法は、個人と仕事のミスマッチをなくすことです。
採用選考時に仕事内容を的確に伝えることで、求職者が正しくイメージできるよう努めましょう。
ジョブローテーションなどを通して社員の適性を見極め、配置転換を行うこともひとつの方法です。
給与や待遇に不満がある
2つ目は、給与や評価制度など待遇に不満があることです。
厚生労働省の発表によると、特に給与の不満は2022年の転職入職者が前職を離職した個人的理由(給料等収入が少なかった)として、4番目に挙げられています。
「業務量に対しての給与が低い」「頑張っても正当に評価されない」といった不満が定着率の低下を招く恐れがあります。
改善方法は、給与体系の見直しや評価制度を明確化することです。定量的で誰が見てもわかりやすく設定することで、社員の意欲向上にもつながるでしょう。
参考:厚生労働省「令和4年雇用動向調査結果の概況 3.転職入職者の状況」
人間関係に悩んでいる
3つ目は、職場の人間関係に問題を抱えていることです。
厚生労働省の発表によると、人間関係のトラブルは2022年の転職入職者が前職を離職した個人的理由(職場の人間関係が好ましくなかった)として、3番目に挙げられています。
仕事内容や待遇に満足していても人間関係のトラブルが原因で離職し、定着率が下がる可能性が考えられます。
改善方法は、人間関係に悩むことになった原因を見極めた上で、職場のコミュニケーション不足の解消や必要に応じた配置転換などが挙げられます。
参考:厚生労働省「令和4年雇用動向調査結果の概況 3.転職入職者の状況」
将来の展望が見えない
4つ目は、個人・会社ともに将来の展望が不透明であることです。
「思い描いていたキャリア通りに進めていない」「会社に成長する兆しが見えない」など、個人の将来だけでなく、企業の将来性に不安を感じた場合も、定着率の低下を招く恐れがあります。
改善方法としては、個人の将来に対して明確なキャリアパスの提示や教育プログラム・研修制度を整備すること、企業の将来に対して新たな事業を展開することなどが挙げられます。
仕事を続けることでどのようなキャリアアップが目指せるのか、企業がこれからどんなことに挑戦していくのかを明確に示すことが大切です。
ワークライフバランスの問題
5つ目は、ワークライフバランスの問題です。
近年はコロナ禍の影響もありリモートワークや時短勤務を導入する企業が増えたことで、働き方の多様化が進みました。
「残業や休日出勤が多くプライベートの時間が確保できない」「人員が少ないため体調が悪くても休めない」など、過度な長時間労働や精神的にプレッシャーがかかる場合、定着率が上がりにくい傾向にあります。
改善方法は、柔軟な働き方を実現することです。
結婚や出産などライフステージの変化に合わせて働きやすい環境を整える、人手が少ない部署があれば人員配置を適切に行うなどが挙げられます。
まとめ
この記事では「定着率の平均」を中心に、定着率低下の要因と改善策について解説しました。
2022年の日本全体の定着率は85.0%です。しかし定着率は、業界や雇用形態などによっても数値が異なるため、自社の定着率が平均と比べてどうかを判断する際は、業界や雇用形態別に細かく比較することもひとつの方法です。
仕事内容や待遇面など原因を見極めて対処し、定着率アップを目指しましょう。
また自社の採用手法ごとに定着率を算出し、分析し新たな採用手法の検討が必要な場合もあります。
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