中小企業の人材不足 とるべき解決策とは?
現在の日本において、中小企業の人材不足は非常に深刻な問題です。そこでこの記事では、日本の人手不足の現状や今後の見通しを解説するとともに、人材不足の解消に向けた解決策を紹介していきます。中小企業の経営者の方はぜひ参考にしてみてください。
1、中小企業が抱える人手不足問題
この項目では、中小企業が実感している人手不足の問題を公的機関の報告結果をもとに紹介し、今後の見通しについて解説します。
中小企業の7割以上が人手不足を感じている
中小企業基盤整備機構が平成29年に公表した「人手不足に関する中小企業への影響と対応状況」という報告では、人手不足を感じている中小企業は全体で7割を超えることがわかりました。そのうち「『人手不足』をどの程度感じていますか」という質問に「かなり深刻」「深刻」と回答した企業の合計は、飲食店・宿泊業が1位で67.7%、2位が運輸業で68.2%と7割近くにのぼり、建設業や製造業、卸売業、サービス業、情報・通信業でも半数以上が深刻な人材不足に悩まされています。
また、中小企業庁が年度ごとに発行する「中小企業白書」の2018年版によると、「従業員数過不足DI」(従業員数が過剰と答えた企業の割合から不足と答えた企業の割合を引いた数値)の推移は、2009年をピークにマイナスに転じ、2013年以降はほとんどの業種が人手不足を実感するようになっているのです。労働力を補うために外国人を採用する企業も増えてはいますが、いまだ日本全体の人材不足を解消する手段とはなっていないのが実情です。
今後の見通し
国立社会保障・人口問題研究所が2017年に発表した「日本の将来推計人口」によれば、日本の生産年齢人口(15~64歳)はピークだった1995年の8,726万人から2015年の7,728万人と20年で10%以上減少しており、人材不足が日本全体の問題であることは明確です。
さらに生産年齢人口は今後も減り続け、2065年には4,529万人にまで減少するという予測もされています。政府も対策に動いてはいるものの、従来のやり方では人材不足の劇的な解消は難しいと考える方が妥当でしょう。
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2、人材不足が中小企業に与える影響
人材不足が中小企業にもたらす影響のひとつは、一人当たりの業務量が増えることによるパフォーマンスの低下です。増えた分を残業でカバーすれば過重労働にともなう過労死やメンタル不調のリスクが高まる上、残業手当の増加が経費を圧迫し、経営状態にもダメージを与えることになります。また、残業が増え続ければ従業員の不満が蓄積し、離職者の増加にもつながる可能性があります。残された従業員がその皺寄せを受ければ、やがて意欲が低下して生産性が悪化し、人的ミスが増え、サービスの質も低下していくでしょう。そうなればクレーム対応やトラブル回避に要するコストが増加し、どんどん悪循環に陥っていくことになりかねません。
また、36協定での上限を超えて従業員を働かせることは法令違反に該当するほか、長時間労働によって従業員が健康被害を被った場合、損害賠償を請求されるおそれもあるため、経営者としては無理強いはできません。結果として業務が回らずに売上や利益が減少すれば、企業としての競争力も低下します。
資金に余裕がある企業であれば人員増強も可能でしょう。しかし、新たに人を雇う余裕がない企業は抜本的な対策を取ることも困難です。実際、営業先があるにもかかわらず採用難や従業員の退職、人件費の高騰などが原因で倒産に追い込まれる会社も少なくありません。このような倒産は「人手不足倒産」と呼ばれ、近年社会問題化しています。
3、人材不足 5つの解決法
ここからは、人材不足を解決するための5つの方法を解説します。
1 業務効率化をはかる
少ない人材で利益を上げるには、業務を効率化する取り組みが欠かせません。効率化の手段として、まずは無駄な業務を減らし、社内でさばききれない業務はアウトソースを検討しましょう。
無駄を削減するには、自社の業務をすべて洗い出し、プロセスを非効率化させるボトルネックがどこにあるのか正確に把握することから始める必要があります。これまで慣習化していた業務の中には、意外となくても困らない業務が多く存在しているかもしれません。また、部署ごと、従業員ごとの業務量が適切に配分されていなかった場合、リソース配分を工夫するだけでも効率化が期待できます。あるいは面談などを通して従業員の得意・不得意を改めて分析し、一人ひとりの個性や強みを生かす適材適所の人員配置が可能となれば、従来よりも個々のパフォーマンスが向上し、さらには会社全体の生産性も引き上げることができます。
業務の無理・無駄・ムラを解消できたら、バックオフィスの定型業務を自動化するRPAやMAツールなどの活用も検討しましょう。ただし、ITツールの導入はあくまで課題解決のための手段です。単に最新のツールを導入することが目的になってしまうと、自社の業務形態にマッチしないツールを選んでしまうなど、コストがかさむばかりで望む効果が得られません。そのため、設備を導入することが必ずしも効率の改善につながるわけではないことを念頭に置き、課題を明確にした上でツールを選定することが重要です。
2 同一労働同一賃金に対応する
中小企業を支える非正規雇用の従業員の待遇について、フルタイムの正社員との格差をなくすことも効果的です。
正社員と比較して待遇差が大きい場合、非正規従業員の意欲は低下しがちです。格差を放置していれば不満を溜め込んだ非正規従業員はやがて会社を離れていくため、その人が抱えていた業務を残った従業員が代わりにこなさなければなりません。結果として長時間労働が慢性化し、さらに退職者が増える可能性もあります。また、欠員補充をするには新たな費用と採用活動のためのマンパワーが必要になるため、コスト面でも損失を被ります。
そこで同一労働同一賃金を採用すれば、非正規従業員のモチベーションが向上し、企業としての労働生産性アップが期待できます。正社員と同様に非正規の従業員に対しても社外セミナーに参加する際の費用を負担するなど、スキルアップを支援することも生産性の向上に役立つでしょう。
また、従業員のモチベーションがアップすれば、離職率も低下するため新たな人材の採用にかかる費用の削減にもつながります。つまり、1人あたりの生産性が上がれば、その分採用活動に投資する以上のリターンが見込めるのです。
3 柔軟な働き方を取り入れる
時短勤務や在宅勤務など多様な働き方を認めると、子育てや家族の介護との両立が必要な人も働きやすくなります。結婚や出産などのライフイベントを経ても仕事を辞めずに済むため、離職率の低減にも効果的です。応募可能な人材の幅も大きく広がり、これまで何らかの事情で働けなかった優秀な人材を確保できる可能性も高まるでしょう。
近年はWeb会議ツールやビジネスチャットなど、リモートワークに便利なツールが普及しており、それらを活用した在宅勤務制度を導入する企業が増加しています。満員電車での通勤時間は疲労やストレスが大きい上に、報酬が支払われない無駄な拘束時間です。その点、テレワークなら通勤の必要がなく、時間的・肉体的・精神的な余裕が生まれるため、集中して業務に取り組みやすいメリットもあります。
また、短時間勤務や在宅勤務は導入にあたってそれほど大きな投資を必要としないので、優秀な人材の維持や確保が少ないコストで実現できるでしょう。
4 待遇や職場環境を改善する
賃金の改善や福利厚生の拡充、長時間労働の是正などで職場環境を見直すことも作業効率アップにつながります。賃金の改善や福利厚生の拡充には追加のコストがかかりますが、経営者が職場環境を良くしようと取り組む姿勢を持てば、従業員の不満が減り、やる気の向上に貢献します。
予算的に大きな投資は難しいという場合でも、リフレッシュ休暇の導入や無料軽食サービス制度といった施策であれば、さほどコストはかかりません。
また、長時間労働が常態化している職場では時間効率が悪い場合が多く、従業員の健康問題も発生しがちです。そのためタスク管理システムを活用して従業員の勤務状況を見える化するなど、効率的な時間の使い方ができるようにサポートする必要があります。
5 高卒生など、幅広い人材を採用する
採用のターゲットを広げ、それに伴い人材教育にも力を入れなければなりません。たとえば大卒者を中心に採用活動をしていた企業が、高卒者にも対象範囲を広げることで人材不足を解消できた事例があります。高卒採用では学校の推薦状をもって応募するため、基本的に内定を出せば辞退されることがありません。求人情報は主に進路指導教員を通して生徒に伝えられるため、広告費や会社説明会の開催費も節約できます。そのため採用にかかるコストが小さく、確実に人員を確保しやすいメリットがあるのです。多くの企業にとって近年の人材不足は深刻な問題となっていることから、積極的に高卒採用を取り入れる動きは加速しています。
大卒採用と比べた高卒採用のメリットについて詳しく知りたい方は、ぜひ以下の記事もご参照ください。
あわせて読みたい:「大卒採用と比較した際の高卒採用を行うメリット」
4、まとめ
今現在、人手不足を実感している中小企業は7割にも及びますが、日本の生産年齢人口は今後40年にわたってさらに減り続けていくことが予想されています。必要な人材を維持・確保できないために会社を存続できなくなる「人材不足倒産」も増えており、人手不足の解消は中小企業にとって喫緊の課題です。人材不足による経営上の困難を克服するためは、少ない人数で高いパフォーマンスを発揮できるよう業務を効率化することや、採用する人材の幅を広げていくことなどが必要です。高卒採用なら、大卒に比べてコストを抑えられ、採用までの期間を短縮できます。慢性的な人材不足の解決策を模索している採用担当者の方は、ぜひこの機会に高卒採用をご検討ください。
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