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これからの時代に活躍する人材 自分の人生は自分で生きる

AIの発達によって「10年後になくなる職業」がオックスフォード大学のカールフレイ氏による論文により発表され、これからの時代に活躍する人物について考える人や企業が増えています。

これからどんな人物が企業で活躍していくのでしょうか。

今回は人事にとってかかせないテーマ、これからの時代に活躍する人材について考えます。

(1)テクノロジーの進化は仕事を奪う脅威か?

これからどんな人物が企業で活躍していくのでしょうか。それは「主体的に生きる人」であると高卒採用Labでは考えます。

2017年はAI元年と呼ばれた年です。

以前は「AI」と聞くと「なんでもできる魔法」のように漠然と捉えられていた節がありますが、開発・実用が進むに連れて、AIで何ができるか、AIでどう解決できるかが理解されるようになってきているようです。

AIのみならず、テクノロジーの進化はわたしたちの働き方を変化させています。

例えば定型業務のデスクワークをパソコン内のソフトウェア型ロボットが代行するRPAなど、これまで行っていた定型的な作業は、一度やり方を登録しタイマーをセットすれば、指定した日時に自動的に作業をしてくれます。もっと大きな視点で言えば、自動運転やロボティクスなど。働き方だけではなく、産業や生活そのものに変化・進化を及ぼすテクノロジーの波がやってきていると言えるでしょう。

さて「AIによってわたしたちの仕事が機械に置き換えられる=わたしたちの仕事がなくなる」という危機感を抱いた声も上がりました。オックスフォード大学のカールフレイ氏による論文(The_Future_of_Employment、2013年)では10年後になくなる職業を予測しており、その中には「会計士」など、高度で専門的な知識が必要な職業も含まれています。

こうした危機感は、これまで「知的労働」と括ってきた仕事の多くがAIにとって代わられるのではないかということでした。「知的労働」とは「論理的思考」や「知識量」がものを言う仕事のことです。ある分野において豊富な知識を持ち(場合によってはその知識をすぐに引き出せる状態であれば良い)、その知識や経験を踏まえて、事象の分析と解決策を論理的に正確に導き出す、そして解決の実行を行う(支援する)という一連のプロセスです。

たしかに、こうしたプロセスにある実行に至る手前の段階は機械の得意とする分野です。人間とは比較にならない大量のデータを保存することができ、そのデータは瞬時に取り出すことができる。事象の分析や解決策を導き出すのに必要となる情報を一度に大量に扱うことができ、それを正確に迅速に処理して、解決策を導くことができます。機械は疲れませんので、安定した精度で取り組むことができます。眠ることもないので、処理を走らせれば24時間いつでも実行可能です。さぼることもないので管理も不要です。

AIの”存在”に対してのわたしたちのリテラシーが高まれば、危機感よりはむしろポジティブに「役割の転換」と理解することができます。

「機械に任せられることは機械に任せよう、本来やるべきわたしたち人間にしかできないことをやれる時代がきた」と。もちろんAIによってすべての職種のすべての仕事がなくなるわけではありません。

そこでまず取り組むべきは「人間にしかできないこと」とは何かを明らかにすることです。言い換えれば、わたしたちが置かれている状況の理解とその状況下での役割の再定義です。そしてそれは、わたしたちの豊かな暮らしを追求するために行うことです。

(2)人を測る共通のものさしは存在しない

かつて「勉強しなさい」は良い大学に入るためでした。良い大学とは偏差値の高い有名大学のことです。「良い大学に入りなさい」は大きな会社に入るためでした。大きな会社では、安定した仕事と給与を手に入れることができ、良い暮らしができるということです。

良い大学に入るためにパスしなくてはならない大学入試、あるいはそれを目指す教育で重視されてきたのが論理的思考力です。知識量や論理的思考に優れた人材が重宝されてきました。

こうした「良い大学に入れば…」という昭和的な図式はバブル崩壊と同時に信奉されなくなってきました。大きな会社(例えば上場企業)の倒産はその象徴だったかもしれません。なぜこうした図式が崩れるのか、その理由を挙げればきりがなくここでは割愛しますが、わたしたちはそういった変化を察知して働き方を変化させてきましたし、変化を余儀なくされたとも言えるでしょう。

他方、AIなどの技術革新によって「学歴」というものさしは、これからさらにものさしの機能を果たさなくなるであろうということです。これまでは一定の説得力を持っていたかもしれませんし、このものさしは定量的でわかりやすいため便利に使われてしまっていたのかもしれません。

学歴というものさしには違和感がある、でも他に用いるべきものさしが何かがわからない、というのがおおかたの捉え方なのではないでしょうか。

ものさし探しのヒントとして、これからの時代に求められるスキル、あるいは活躍する人材像について考察している書籍が多数あります。乱暴に言ってしまえば、人をはかる共通のものさしはない、という当たり前の結論に行き着きます。

(3)「目的」という原動力

高卒採用Labというメディアは、若手人材採用を行う企業側の選択肢を広げる情報の提供という主旨で運営されています。背景には少子化による若手人材の不足があり、人手不足による倒産や若手人材の不足による企業の高齢化という問題が顕在化しており、その解決の一助になればというものです。

その上でさまざまな企業の取材を行いました。取材を通じて、おぼろげながら「どんな人物が企業で活躍しているのか」その共通点、アウトラインが形を表してきました。

それは何か。「主体的に生きる力」であると考えます。

「生きる」というと仕事よりもプライベートな領域のことではないかと思われますが、仕事とプライベートの境界がなくなりつつある昨今です。またこれはその両面に共通することでもあります。

主体的という言葉は、自分の意思や判断によって行動をすることを意味します。

自分の意思や判断は何に基づくのかといえば「目的」です。

わたしたちは仕事をする上(生きていく上)で大なり小なり目的を持って取り組んでいます。

目的は与えられることもありますが、自ら見出す(見出さなくてはならない)ことの方が多いです。目的は論理的に導かれるというよりは、感性によって見つけ定めることができるものです。わたしたちは目的を果たすために生きているといっても過言ではありません。

目的を果たすためにはどうしたら良いか、そのための道筋を描き、必要な物事を洗い出しそれを集め、推し進めるということになります。推し進める過程は判断の連続でしょう。そうして目的を果たすことに近づきます。

(4)意義を見つけること、リーダーシップ

これはすなわちリーダーシップです。

目的は一人で果たせることもあるでしょうが、誰かと共同で行うことのほうが圧倒的に多いものです。リーダーは仲間を見つけ、仲間を同じゴールに向かって一丸と進む「チーム」を作ることになります。良いチームに必要なのは、メンバーが目的に意義を見出すことです。意義は強いモチベーションとなって人を動かします。

リーダーは目的をメンバーに伝えます。ある時は資料を使って、あるときは日々の業務の会話で。あえて「伝える」ことを意識しなくても、共にした時間の中で非言語な情報によって、メンバーは共感し心を動かされているかもしれません。

伝わるということは、論理で納得することでもあるし感情で突き動かされることでもあります。優れたリーダーはその両方のスイッチを押せるスキルを兼ね備えています。

こう考えると「人が動く」ということは、「目的」がありそこに「意義」を見つけられた(知った)状態、であると言えるのではないでしょうか。きっかけは所与のものかもしれません。それがお仕着せでなく自らのものになったならば、それが主体的であると言えるでしょう。

また、チームには「A」という主張を持つメンバーもいれば「B」という主張を持つメンバーもいます。そのときAとBを分解して、そこにある共通部分を見つけてそれを結論とするという手法では得られるチームの推進力は限定的です。その共通部分+αを素材として構想し、多少なり飛躍した結論を出す力が求められます。メンバー同士の力を足し算ではなく掛け算でチームの力とするというのはこういうことでもあります。

これは何も目新しいリーダーシップ論ではありません。ではなぜ、いまこうした力の必要性が高いと感じたのでしょうか。

一つの答えは、わたしたちの活動単位が小さくなっているからです。

企業の活動が「わたしたちの生活における課題を見つけ、その課題解決方法を見つけて製品やサービスを開発し提供する、暮らしを豊かにする」ということだとすれば、大きい企業は大きい課題を解決することを得意とします。大企業はある大きな目的に最適化して組成されており、その方が合理的だからです。

社会には、大きな課題が存在するかのように見えます。しかし、目を凝らして見ると、その課題はさらにひとまわり小さい課題の集合体です。そして、その一つ一つは少しずつ解決方法が違います。それくらいわたしたち一人一人の事情は異なっています。

大きな課題に見えて、その課題は適切な粒度まで分解が必要、そしてそのサイズは決して大きくはない(大きいままでは解決ができない)、これが現代の状態であるとするならば、その解決には小さなチームが必要であるということです。つまりそれだけの数のリーダーが必要になります。

(5)自分の人生を生きるために

「レール」という言葉は、目的に向かって進む便利な道筋です。自分というよりは誰かが用意したという意味を持つ道筋です。ある種このレールがなくなったということを改めて自覚する必要があります。そもそもレールがあってもなくても(レールがあったというのも幻想だったのかもしれません)、自分が自分の人生のリーダーとして生きる必要があるのです。

だからこそ、これからの時代に必要なバイタリティは「主体的に生きる力」なのだと考えます。

そして「主体的に生きる力」を身につけるためには、右脳も左脳も鍛えながら「経験知」を蓄えること、人との会話を続けることが必要なのではないでしょうか。

大学生活を社会に出るモラトリアムと形容する人もいます。モラトリアムとは、猶予期間のことです。「社会に出る前に遊んで視野を広げておくように、人脈を広げておくように」、それは「やりたいことを見つけるため、やりたいことをやれるようにするため」です。

大学生活をモラトリアムだというのは「一度入社したら、定年までその会社で働く」という志向によって生まれたのかもしれません。終身雇用はもはや過去の言葉です。わたしたちは長いキャリアの中で転職をすることは当たり前、キャリアはフレキシブルで多様です。キャリアとキャリアをつなぐ合間にちょっとした休息をとることもできます。

大学に限らず枠を広げて考えます。

学生をしながらでも、いつでも社会は知れます。それはアルバイトでも良いのです。

ただ「誰かに言われたことを言われた通りにやるだけ」では主体性は養われません。自分の目で見て頭で考えること、疑問に思ったことは質問をし、それをもっと良い方法で遂行できる方法はないのかと考え、試してみることです。

もしかしたらその方法はうまくいかずに何度も違ったやりかたを試すことになるかもしれません。何度もチャレンジする、その粘り強さが大切です。もしかしたらそのやり方がよく、他の人にもおすすめしたくなるかもしれません。その時は他の人になぜそれが良いか、どんな効果があるかなどを伝えます。なかなか最初はわかってくれないかもしれません。またいろいろな考えを持つ人がいるでしょう。そうした中で、伝えることを諦めずに会話を続けることが大切です。

こうしたことが主体性を養う原型となります。

これまでは、学生時代は「社会に出るための準備期間」と言われてきましたが、その準備に社会の接点はあまり用意されていませんでした。今では教育カリキュラムの中でも社会に触れる機会が多く用意されるようになっています。ただ漠然と社会に触れるのではなく、そこで「経験知」をどれだけ得られるかが成長の鍵です。

今の学生にとって社会を早く知ることはアドバンテージではなく、もはや当たり前のことになりつつあるということです。

そして、主体性を身につけることは自分の人生を生きるということです。

豊かな人生を送るとは、誰かの人生を生きることではなく、自分の人生を生きることに他なりません。

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