高卒採用は面接のルールが厳しい? 高校生へのよくある質問・NG質問
高卒採用を行う会社から「面接時に質問事項が制限されているが、どんな質問ができるのかわからない」といった声が多く聞こえてきます。あらかじめ理解しておかないと、高校生が公平な選考がなされていないと判断し、ハローワークへの報告や企業への勧告に至るケースもあります。
本記事では面接で何を聞けばいいのか困っている人事・採用担当者向けに、聞いてはいけない質問事項と良い質問例や事前対策の方法について紹介します。
1、高卒採用面接で聞いてはいけない質問項目
高卒採用において、「本人の能力と適性に直接関係ない事項を採否決定の判断基準としてはならない」というルールがあります。本人の能力と適性に基づいて採否の決定を行うことは、当然のことです。
しかし、ここで注意するべきことがあります。それは、「就職差別につながるおそれのある質問を行わないこと」です。就職差別につながるおそれのある質問とはどのようなものがあるのか、全11項目を紹介します。
もし誤ってこのような質問をしてしまうと、高校やハローワークに報告され、次年度以降の採用活動に影響するだけでなく、会社の信頼を損なってしまうおそれがあるため、細心の配慮が必要です。
本人に責任のない事項
1.国籍・本籍・出生地に関すること
2.家族に関すること(※要注意)
3.住宅状況に関すること
4.生活環境・家庭環境に関すること
出生や家族構成、どんな家に住んでいるのかなど、本人の能力には関係のない質問はNGとされています。特に注意をしておきたいのは「家族」に関する質問です。どんな環境で育ってきたかはよく触れやすい項目です。しかし、育った環境は本人の責任ではないので、適性を計るための指針として判断してはいけないのです。高卒採用面接する側の質問力が最も試されるといってもいいでしょう。
例えば、「ご両親はどのような仕事をされていますか?」や「お母さんはシングルマザーですか?」といった質問は、問題のある質問としてハローワークへ報告されてしまうおそれがあるので、気をつけましょう。
本来自由であるべき事項
5.宗教に関すること
6.支持政党に関すること
7.人生観・生活信条等に関すること
8.尊敬する人物に関すること
9.思想に関すること
10. 学生運動や労働組合等の社会活動に関すること
11. 購読新聞・雑誌・愛読書に関すること(※要注意)
宗教や支持政党については、憲法でも自由が定められている項目なので理解できるでしょう。ここで注意しておきたいことは、「本」についての質問です。高卒採用の面接では聞かない方がいいでしょう。
中途採用や、大卒採用の面接の中でも「最近、どんな本を読みましたか?」と聞く人事の方も多いのではないでしょうか。普段から何かを学ぼうとしているのか、どんな本に感銘を受けたことがあるのか、本を読む習慣があるのか、など気になる項目かもしれませんが、その回答によって採否を決定することは意図せずとも「思想・信条の自由」を侵害してしまう可能性があるためNGとなっています。
もう一つ、「尊敬する人物はだれですか?」という質問も避けておきましょう。質問者の意図とは関係なく、回答する側である高校生の回答次第では、その質問が本来自由であるべき事項を侵してしまうことがあるのです。
2、良い質問の例
ここからは、よくある良い質問例をみていきましょう。質問をすることでどのような判断材料を得られるかも紹介します。
1.志望動機
この質問は高卒・大卒・中途採用問わず面接で聞く定番の質問です。この質問では、高校生の意欲や目標を知ることができます。適性や会社に対する考えを判断するのに最適な質問といえるでしょう。
2.高校生活で頑張ったこと
これも代表的な質問事項です。高校生活の中で、何に興味・関心を持ち、どのように人と関わってきたのかをうかがい知ることができます。また、質問の流れから経験やスキルを今後どのように仕事に活かせると考えているのかを聞くこともできます。
3.自分の長所・短所
この質問では、自己分析ができているかの判断材料が得られるでしょう。加えて、長所をどのように仕事に活かすのかと、短所を自分でフォローする力、つまり課題をどのように解決していくかを知ることもできます。入社後に高校生がどのような形で会社に貢献してくれるか、判断する材料にもなるでしょう。
4.会社見学で感じたこと
高校生が就職試験・会社選択を行う上で重要なのが会社見学です。魅力に感じたこと、またどのようなことを疑問に感じたかといった率直な意見とともに、見たもの・感じたことを自分の言葉で説明する能力があるのかを見極めることができます。
これらの質問がよく面接で用いられる質問事項であり、高校生もあらゆる場面を想定し対策しています。これらの質問を投げかけることで、高校生の適性や能力を知ることができると考えられます。
3、面接事前の対策
ここまで見ると、「では何を質問すれば良いのか?」と感じてしまうかもしれません。大半の人事の方が高校生の採用面接での質問項目に頭を悩ませているのも事実です。私たちが受ける相談でも上位を占めているのがこの内容です。高卒採用において大事なことはあくまで「本人の能力と適性」で判断するということです。
また、「面接した高校生は全員採用しなければならない」という誤解も一部で広まっているようですが、もともと会社の考え方に共感していない学生を採用しても早期離職につながり、高校生にも会社にもお互いにメリットは何もありません。正当な質問で面接を行い、合否を決めましょう。しっかりと育成をするということを念頭に置いて採用活動を行っていきたいですね。
ここでは、事前にできる面接対策を考えてみましょう。
1.質問シートを作成する
事前に質問シートを作成することで、大きく外れて「うっかり聞いてしまった!」ということを防ぐことができます。事前準備を怠ってしまったがために、うっかりルール違反の質問をしてしまうと、会社に対する高校からの評判を落としてしまうおそれがあり、今後の採用活動に悪影響を及ぼすこととなってしまいます。
質問シートの作成にあたっては、自社の理念や方針から「どんな高校生を採用したいのか」を明確にし、質問を整理しておきましょう。
極端な例ですが「明るく・活発な生徒」を採用しようと思っているのに、質問シート作成の時点で質問の整理をせずに「高校で黙々と打ち込んだことは何ですか?」という質問項目を用意したとします。「黙々と打ち込んだ」エピソードとして「勉強にひたすら打ち込んできました」と返答があったときに、「この生徒は元気さや活発さが足りないのでは」と推察してしまうでしょう。適切な質問を考えておかないと、本当にその生徒が自社で求める資質を備えているかどうか見極めることはできません。
質問項目を作るには、
「元気な学生が欲しい」場合、元気さを引き出せる質問をする
「コツコツと努力できる学生が欲しい」場合、何かに打ち込んだストーリーを聞く
「リーダーシップのとれる学生が欲しい」場合、学生時代やアルバイトなどで生徒会やリーダーなどの経験があるのか、どのような工夫をしていたかを尋ねる
のように「採用したい高校生」のイメージ像を考えて質問シートを作るといいでしょう。
2. 社内で面接の質問ルールを共有する
もう一つよくある落とし穴は、人事担当がルールを理解していても、二次面接や最終面接を担当する役員・社長にルールが伝わっておらず、意図せず抵触してしまうことがあることです。
人事・採用担当者が細心の注意を払って一次面接を行い、合格を出したとしても、二次面接以降の面接官を務める役員や社長に聞いてはいけない質問が伝わっていなければ、禁止されている質問をしてしまうおそれがあります。その情報は高校やハローワークに伝わり、その高校だけでなく、同じ地域の高校から生徒を紹介してもらえなくなる可能性もあります。
4、まとめ
高卒採用時の面接では家族や家庭環境をはじめ聞いてはいけない質問があります。質問事項は、本人の能力や適性にフォーカスしたものに絞ることが重要です。
高卒採用においては、事前準備と社内共有が大切です。どのような高校生を採用したいのかを明確にし、質問を準備することで、求めていた人材なのかを見極められます。社内で高卒採用のルールについて共有すると、今後の採用活動をより良いものにすることができるでしょう。
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